この記事では、会社設立の基礎知識について詳しく説明します。会社設立の際の手続きや法律の知識、会社設立のメリットとデメリット、さらに会社立ち上げの必要な知識を網羅しています。
まず、起業をするための一歩目は「起業の目的や理由」を明確にすることです。
何のために、何を実現したいのか、その理由と目的がビジネスの核心となり、基盤にもなります。
まずは目的を明確にしてみてください。
次に会社設立において決める情報を説明します。会社設立において最初に決定するべき情報は以下の8つです。
- 会社形態
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 会社設立日
- 会計年度
- 役員や株主の構成
他に、会社の根本原則を明示するための重要な書類である定款も必要となります。定款とは、会社の基本的な規則や制度を記した書類で、会社の設立を公的に認めるためのものです。
定款は会社設立の法的手続きを進める上で必要不可欠であり、会社の運営方針やビジネスモデルを決定づける重要な要素です。会社の目的や方向性に合致するように設計していきましょう。
目次
会社設立のメリットデメリット
会社設立には大きな決断が求められます。堅固な事業計画を立て、起業のリスクを最小限に抑えるために、ここからは「会社設立のメリットとデメリット」を深く掘り下げていきます。メリットとデメリットをバランス良く理解し、適切な判断を下すことが会社設立における第一歩です。
会社設立のメリット
会社設立のメリットは、信頼を得られることです。会社を設立すると、法人として公的に認められる存在となります。お客様や取引先から見たときに、安定性や信頼性を示す要素となり得ます。特に、長期的な契約や大規模なプロジェクトに関わる場合、法人であることは重要な安心材料となります。会社としての地位が確立することで、取引先や顧客からの信頼度も高まります。
節税も大きなメリットです。日本では個人の所得に対して適用される所得税率は、所得金額により段階的に上がっていきます。一方で、法人税率は一定であり所得税率より穏やかなため、大きく稼ぐほど所得税よりもかかってくる税金が少なくすみます。また、法人の場合は特に社員の給与などが経費として扱えるため、利益を抑えて税負担を軽減することが可能です。
さらに、資金調達のしやすさも忘れてはなりません。前述した信頼があるため、銀行からの事業ローン、ベンチャーキャピタルからの資金調達、政府や地方公共団体からの補助金・助成金・融資など、様々な融資の選択肢が広がります。会社としての体制が整うことで、外部からの資金調達をしやすくなります。
加えて、経費として扱える項目の増加、欠損金を10年間繰り越すことも会社設立の大きなメリットとなります。これらを踏まえた上で、あなた自身のビジネス戦略を立てていくことが重要です。
会社設立のデメリット
会社設立のメリットだけでなく、デメリットを理解することも重要です。
まず、デメリットの1つが赤字でも法人住民税がかかるという点です。法人住民税は、会社が所在地の市町村と都道府県に対して支払う税金で、その算出基礎となるのは会社の所得金額です。しかし、法人住民税には「均等割」と「所得割」の二つの部分からなり、そのうちの一つである「均等割」部分は、所得に関係なく資本金や従業員数で決まります。そのため、会社が赤字でも「均等割」部分の法人住民税を納付する必要があります。
次に、会社の設立・運営、解散に費用がかかるということも忘れてはなりません。特に初期の段階では大きな経済的負担となる可能性があります。
さらに、社会保険への加入も必須となります。これも個人事業主と比較すると負担が増えます。
最後に、個人事業主では無かった事務的な負担が発生するという点も理解しておくべきです。会社設立には多くの法的・事務的な要件が伴います。
これらのデメリットを理解し、計画に反映させることでリスクを最小限に抑えられます。
設立に必要な費用
会社設立に必要な最低費用は、その規模や形態、設立に必要な手続きによりますが、こちらでは一般的な費用をご紹介します。
最低費用はいくら
株式会社を設立する際の最低費用は約15万円です。一般的な株式会社の設立には以下5つの費用がかかります。
- 資本金
- 登記手数料
- 印紙税
- 専門家の報酬
- その他経費
資本金は1円からの株式会社設立が可能です。
登記手数料は公証役場での定款認証費用と商業登記費用が必要になります。これらは合わせて約6万円ほどで、さらに定款認証申請書に必要な印紙税は4万円です。
司法書士や税理士などの専門家に依頼した場合、10万円から数十万円となることが一般的です。その他にも会社印の作成費用や事務所の設備費用など、さまざまな経費を加味した場合、最低でも15万円はかかると思っておきましょう。
具体的な手続きに入る前にしっかりと調査してください。
1円株式会社は設立可能?
結論から言うと可能です。
日本では2006年5月から一部改正された会社法により、株式会社の最低資本金制限が撤廃され、1円でも株式会社を設立することが可能になりました。
しかし、設立は1円からできても、会社を運営するには設備投資や人件費、商品の仕入れなど、運営資金といった追加のお金が必要になってきます。。
また、資本金が少ない会社は、取引先や金融機関からの信用が得にくい場合もあります。融資を受けにくい点もデメリットになるので注意してください。
定款に記載する事項
定款とは、会社の基本的な運営ルールや方針を定めた重要な文書です。しかし、具体的にどのような項目を定款に記載する必要があるのかは明確に理解していない人も多いでしょう。こちらでは、定款に記載する事項について詳しく説明します。正確な定款作成の知識を身につけ、適切な会社運営に必要な準備を進めていきましょう。
定款の作り方
定款には以下のような事項を記載する必要があります。
- 会社の形態(株式会社、有限会社など)
- 商号(会社名)
- 事業の目的
- 本店所在地
- 資本金
- 設立日
- 会計年度
- 役員の選任方法と任期、報酬
- 資本金の納入方法
- 株主総会の開催方法等
上記の情報を基に定款を作成します。日本では、商法に基づいて定款は公証人により公証される必要があるため、公証役場にて定款の作成を行います。具体的な書き方やフォーマットは公証役場や各種専門家に相談するとよいでしょう。
定款に必ず書くべき事項
会社設立の過程で作成する定款には、絶対的記載事項と呼ばれる、必ず記載しなければならない項目が存在します。
会社設立を法的に成立させるための必須条件であり、その重要性から無視することはできません。絶対的記載事項には、主に以下の6つが該当します。
- 商号(会社名)
- 目的
- 本店所在地
- 出資の全部を出資者が払い込む時期
- 役員の氏名及び住所
- 公告の方法
これらの項目が定款に明確に記載されていなければ、会社設立の申請は認められません。定款作成の際は、これらの絶対的記載事項を忘れずに記述しましょう。これにより、会社設立の過程がスムーズに進み、法的なトラブルを避けることができます。
その他に定款に書く事項
定款には絶対的記載事項とともに、相対的記載事項と任意的記載事項と呼ばれる項目が存在します。
相対的記載事項とは、特定の条件に該当する場合にのみ記載が必要となる事項です。
具体的な相対的記載事項には、主に以下が該当します。
- 株式の譲渡制限に関する定め
- 株券発行の定め
- 取締役会の設置
- 監査役の設置
- 公告方法
- 設立時における現物出資や財産引渡
これらはすべての会社が記載しなければならないものではありませんが、あなたの会社の運営方針によっては、定款に明記することが求められます。よって、相対的記載事項を理解し、自社の状況に合わせた適切な記載を行う必要があります。
定款に記載することが可能な項目の中には、任意的記載事項という、会社設立に必須ではないもののビジネスの特性や運営方針により定款に記載する事項があります。
主に以下の4つが該当します。
- 事業年度
- 役員の数
- 役員報酬の決め方
- 株主総会に関する事項
- 株式に関する事項
それぞれの会社によって、任意的記載事項について記載する内容や範囲は異なるため、自社の運営方針に合った適切な記載を行ってください。
1人でも会社を作る手順
1人でも会社を設立する手順について説明します。
会社設立は法律的手続きが多いですが、1人でも可能です。適切な手順を踏むことで、スムーズに設立できます。
実は日本の法律は「一人会社」を許可しています。これにより、個人でも企業活動を行うことが可能です。
まずは事業計画の策定です。会社設立の目的、事業計画、資金計画を明確にします。これがビジネスの基盤となります。
次に定款作成です。会社の基本的な運営ルールを定めた定款を作成します。公証役場で公証を受けることが必要です。
3つ目が資本金納入です。定款に記載した資本金を納入します。一人会社の場合、最低資本金は1円です。
4つ目は登記申請です。定款認証後、法務局へ会社設立登記を申請します。登記簿謄本と印鑑証明書が必要となります。
最後は、業種によっては設立後に特定の許可を取得する必要がある場合があります。また、労働保険、社会保険、税務署への開業届け出などを行います。
このように、1人でも会社設立は可能です。ただし、法律手続きが多いため、手続きに不慣れな方は司法書士や行政書士に依頼してください。
会社設立で頼りになる専門家
会社設立にはさまざまな手続きや法的な要件が伴います。
設立手続きをスムーズに進め、法的な問題を未然に防ぐためには、専門家に頼ることも1つの手段です。しかし、一体どのような専門家が存在し、どの専門家に何を頼むべきなのでしょうか。また、その費用はどの程度なのでしょうか。こちらでは会社設立における専門家について説明し、各専門家の役割、メリット、デメリット、費用等について詳しく解説します。
会社設立を専門家に頼るメリット
会社設立を専門家に依頼することには、多くのメリットとデメリットがあります。
メリットとしては、専門家は法律や会計、税務などの複雑な知識を持っているため、間違いを防ぎ、設立手続きをスムーズに進めることが可能な点です。
次に、複雑な手続きを専門家に任せることで設立手続きの負担を軽減できます。起業家はビジネス計画の策定や資金調達など、他の業務に集中できるのは大きなメリットでしょう。
デメリットとしては、専門家の費用が必要となることです。しかし、専門家の助けを借りることで得られる時間とリスクの削減は、その費用を補って余りある価値を提供してくれるでしょう。
各専門家がしてくれることと費用
専門家に会社設立を依頼した場合、その費用は弁護士、税理士、行政書士などの職種や、会社設立だけでなく税務や法務のアドバイスが含まれるかなどのサービス範囲、そして専門家の評価や経験によって大きく変動します。
一般的には数万円から数百万円までと広範で、多くの場合、50,000円から200,000円程度が平均的な価格となるでしょう。ただし、最も低価格の専門家を選ぶのではなく、自身が必要としている知識や能力を持っている専門家を選ぶことが重要です。
職種 | 費用 |
司法書士 | 数万円から数十万円程度 |
行政書士 | 数万円から数十万円程度 |
社会保険労務士 | 数万円から数十万円程度 |
税理士 | 数万円から数十万円程度 |
士業に相談せず相談窓口を利用する場合 | 多くが無料 |
司法書士に会社設立を依頼する場合、一連の設立手続きを代行してくれます。これには定款の作成、商業登記申請、電子証明書の取得などが含まれます。法律に関する専門的な知識を有し、法人設立に必要な複雑な手続きをスムーズに進めることができます。
一方、司法書士への費用は、そのサービスの範囲や経験によりますが、一般的には数万円から数十万円程度です。
行政書士は会社の設立や新規事業開始の際に、許認可手続のサポートをしてくれます。
許認可に対する知識を持っており、定款の作成と認証の代行作業を行えます。
費用面では、一般的には数万円から十数万円程度となります。
社会保険労務士に会社設立を依頼する場合、その主な役割は、従業員の社会保険や労務管理に関する手続きをサポートすることです。
会社設立自体の手続きは専門範囲外ですが、会社を設立した際には、労働者の雇用、給与、社会保険の手続きなど、多くの労務管理が必要となります。
会社設立の初期段階から社会保険労務士に相談することは、適切な人事労務管理を確立する上で大変有益です。社会保険労務士は、労働法規に関する専門的な知識を持ち、法令遵守を確保しながら労働者の管理を行うためのアドバイスをします。
料金は社会保険労務士の経験やサービス内容によりますが、一般的には数万円から数十万円程度が目安となるでしょう。
税理士に会社設立を依頼する場合、その役割は、設立に関する税務面でのアドバイスや支援が主です。
税理士は税法に関する専門知識を有し、会社設立に際して必要な税務手続きを行うだけでなく、税務リスクの軽減や税金節約の戦略についてもアドバイスします。
特に、税制が複雑で改正されることが多いビジネス環境において、税理士の専門的な知識と経験は大きな助けとなるでしょう。
費用は、税理士の経験や専門性、サービス内容によりますが、一般的には数万円から数十万円程度が目安です。ただし、費用だけで選ぶのではなく、税理士の実績や信頼性を考慮してください。
士業に相談せず、会社設立に関する相談窓口を利用する場合、専門的なアドバイスを無償または低費用で得ることが可能です。
例えば、公的機関やビジネス支援団体が設けている設立支援窓口では、会社設立のプロセスや必要な書類、法律や税務に関する基本的な質問に答えてくれます。
しかし相談窓口で得られるのはあくまで基本的な事項のため、特定の業界や個々のビジネスに対する専門的な知識や深いアドバイスにの提供は限定されます。法的な問題が発生した場合の具体的な対応や、長期的な戦略についての助言も得られないかもしれません。
会社設立の初期段階であっても、特定の業界知識を持つ専門家にアドバイスを求めることが、事業をスムーズに行うための大きな助けになります。
どの専門家に頼る?
手続き全般なら司法書士、お金のことなら税理士を頼るようにしてください。そこから社労士等の専門家を紹介してもらうことも可能です。
1. 司法書士: 会社設立の際に必要となる登記手続きを担当します。設立登記や定款の作成、商号の確認など、法的手続きを全般的にサポートしてくれます。
2. 税理士: 税務に関する専門的なアドバイスを提供します。会社設立に伴う税務処理や、設立後の税務申告などについてサポートします。
3. 社会保険労務士: 社会保険や労働関係の法律に精通しています。労働保険や社会保険の手続き、労働法に関するアドバイスなどを提供します。
4. 公認会計士: 会社設立における財務や会計の専門的な知識を持っています。財務計画の策定などをサポートします。
5. 弁護士: 法律問題全般に対応可能で、特に契約書作成や法律相談、訴訟などに強いです。
専門家に頼るかどうかは、自身の知識や経験、設立する会社の規模や業態によります。また、複数の専門家に相談することで、より総合的な視点から会社設立を進めることが可能です。
(まとめ)
本記事を通して会社設立における基礎知識について深く理解できたでしょうか。起業の目的の明確化、会社形態の選択、商号や事業目的の定義、本店所在地の決定、資本金の設定、設立日や会計年度の決定、役員や株主の構成など、会社設立には多岐にわたる要素が関わってきます。また、会社設立のメリットとデメリットを比較し、会社設立に必要な費用を把握し、定款に記載すべき事項を理解することも重要です。さらに、会社設立を専門家に依頼する際のメリットやデメリット、その費用についても確認しました。これらの知識を総合することで、会社設立をスムーズに行っていきましょう。
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