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資金繰りのキホン~運転資金はどれくらいあればいいの?

ビジネスを続ける上で、資金繰りを管理することは最も重要なことの1つです。資金繰りがしっかりできていないばかりに、自分のビジネスを辞めざるを得なくなるケースは多々あります。

資金繰りの管理をするにはどうすればいいか、「運転資金」という考え方を使って説明していきます。

運転資金とは

運転資金とは、ビジネスを継続するために必要なお金のことです。

特に会社相手でのビジネスではよくあることですが、売り上げてから実際にお金が入金されるまでには1,2か月ほど期間が空くのが通常です。

お金が入金されるまでの間に、仕入れた商品の支払や、家賃・水道光熱費の支払、人を雇っているのなら給料の支払いなど、お金を支払わなければいけないものがあった場合、手元に支払いをするだけのお金が必要になります。

この支払ができなければビジネスは継続できないため、運転資金を割り出し、手元にいくらお金があればビジネスを安全にまわしていけるのかを把握しておくことがとても重要です。

運転資金の計算方法は以下になります。

運転資金=売上債権+在庫-(仕入債務+未払金)

これからお金に替えられる売上債権と在庫の額から、これから支払が必要な仕入債務や未払金の残高を差し引いた額が運転資金になります。

この運転資金がマイナスであれば資金繰りが不足している状態であり、プラスであれば資金繰りに余裕がある状態と言えます。

ただし、運転資金をいくら持っておいた方がいいかという目安がありますので、計算した運転資金がプラスであればそれでいいというわけではありません。

金額の目安は後ほどお伝えします。

売上債権

売上債権とは、売り上げたものの、まだ入金されていない金額のことです。

先ほど説明した通り、 特に会社相手にビジネスを行っていると、商品やサービスの販売をしてから入金まで1,2ヶ月待たされることはよくあります。

そうした未入金の売上のことを売上債権と言います。

仕入債務・未払金

ビジネスで販売する商品や材料、ビジネスで使う備品・設備を買った場合に、支払わなければならない金額のことを仕入債務と言います。

未払金とは、人を雇っているならば毎月の給与、オフィスを借りているのなら、毎月発生する家賃や水道光熱費で、まだ支払っていないものです。

個人事業主や、設立間もない小さい会社では、売上がたたないと自分の生活もままならないということもあるでしょう。

そうした場合、自分の生活費も未払金に含めて計上すると、より実態にあった必要資金が計算できます。

棚卸資産

仕入れたものの、まだ販売されていない在庫のことです。

これから販売してお金に換えられるので、運転資金の計算上、プラス要素になります。

資金繰りがしっかりしていれば潰れない

会社に仕入債務を支払うだけの資金が残っているならば、どんなに赤字が続いても事業は潰れません。

逆に、どれだけ売上が上がって利益を出していたとしても、仕入債務・未払金を支払うお金が無い事業は潰れてしまいます。(これを黒字倒産と言います)

例えば、突然大口の受注があり、大量に商品を仕入れ、従業員にも大幅な残業をしてもらわないといけなくなり、月の支出が一気に増えたとします。

手元にある現金が1,000万、大量の仕入と残業代で今月1,500万円支払わないといけなくなり、売上の入金は2ヶ月後、という事態が起きると、足りない500万円をなんとか調達できなければ、黒字倒産となってしまいます。

この他に、売上債権を中々支払ってもらえないことが多くなると黒字倒産の原因になります。

また、会社を設立したばかりのころは、なかなか売上がたたず、赤字になりがちです。

そうなると、ビジネスが軌道に乗ってきてお金が入ってくるまでは、手元の現金や借入で耐えなければなりません。

くれぐれも資金繰りにはお気をつけください。

具体的な計算方法とは

運転資金について基本的な計算方法を紹介しましたが、ここでは実際に資金繰り計画で使うため、より詳細な計算方法をご紹介いたします。

運転資金回転期間

倒産せずにビジネスを継続していくためには、売上高の何カ月分の資金が必要かを測定する指標です。

計算式は下記になります。

営業運転資本回転期間(ヶ月) = (売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務) ÷ 1月あたり売上高

例えば(売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務)の値が500万円、売上高が月250万円とします。

すると

500万円÷250万円=2ヶ月

売上高の2カ月分の資金が必要であり、つまり500万円が手元に無いと倒産の危険があることになります。

運転資金回転期間が長いほど必要な手元資金の額は大きくなるため、運転資金回転期間は短いほどいいです。

運転資本回転期間を短くする方法については、この後説明いたします。

安定してビジネスを行うためには、常に必要な運転資金を認識し、確保しておく必要があります。

売上債権回転期間

商品やサービスを販売してから、入金されるまでどれくらいの期間がかかるかを示すものです。下記の計算式により算出します。

売上債権回転期間=売上債権÷1日あたりの売上高

例えば売上債権300万円、年間の売上が1,500万円(1日あたり約4万円)とすると、売上債権回転期間は下記になります。

300万円÷4万円=75日

これは、売り上げてから入金されるまでに75日かかるということを示します。

棚卸資産回転期間

在庫がどれくらいの期間で売られるかを示すものです。下記の式により算出します。

棚卸資産回転期間=棚卸資産÷1日あたりの売上高

例えば在庫150万円、年間の売上が1,500万円(1日あたり約4万円)とすると、棚卸資産回転期間は下記になります。

150万円÷4万円=37.5日

これは在庫が売れるまでに37.5日かかることを示します。

仕入債務回転期間

仕入れたものや発生した費用について、支払までの期間はどれくらいかを示すものです。下記の式により算出します。

仕入債務回転期間の計算方法=仕入債務÷1日あたりの売上高

例えば仕入債務200万円、年間の売上が1,500万円(1日あたり約4万円)とすると、仕入債務回転期間は下記になります。

200万円÷4万円=50日

仕入れや発生した費用の支払い猶予期間は50日ということになります。

より精密な運転資金回転期間の算定方法

ここまで紹介した回転期間を使って、運転資金回転期間についてより精密な計算をすることができます。

運転資金回転期間についてより確かな分析をしたい場合は、こちらを使うようにしてください。下記の式により算出します。

運転資金回転期間=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

売上債権回転期間75日、棚卸資産回転期間37.5日、仕入債務回転期間50日とすると、運転資金回転期間は下記になります。

75日+37.5日-50日=62.5日

従って、このビジネスで安定した資金繰りを行うためには、運転資金を約2カ月分確保しておく必要があるということになります。

なお、この方法を使うと、運転資金回転期間がマイナスになる場合があります。その場合、資金繰りに十分な余裕があるということを示します。

安全な運転資金回転期間の目安は

運転資金回転期間を算出することで、資金繰りについての安全性を分析することができますが、では運転資金回転期間がどれくらいであれば資金繰りに余裕があると言えるのでしょうか。

業種によって運転資金回転期間の目安は変わるのですが、全業種の目安は2.0か月になります。

業種ごとの運転資金回転期間の中央値は下記の表になります。(平均だと会社ごとに差がありすぎるため、中央値を使用しています)

 201920202021
全業種2.0か月1.9か月2.0か月
情報・通信業1.6か月1.6か月1.5か月
サービス業1.0か月1.0か月1.1か月
小売業0.5か月0.6か月0.7か月
卸売業1.7か月1.7か月1.7か月
電気機器3.7か月3.8か月3.9か月
食料品1.9か月1.8か月1.8か月
医薬品4.5か月4.6か月4.9か月
陸運業0.5か月0.5か月0.5か月
精密機器4.6か月5.0か月5.1か月

自分の業種に当てはめて、運転資金回転期間がどれくらいであれば資金繰りとして健全な状態になるのかの参考にしてください。

運転資金回転期間は短いほど良いので、ご自身のやっている ビジネスの回転期間が業界平均よりも大幅に長い場合は気を付けてください。

運転資金を確保するには

運転資金が足りないと、下記のトラブルが発生する恐れがあります。

・ビジネス拡大のチャンスがきても、対応できなくなる

・毎月の家賃や人件費の支払いができなくなる

・仕入代金の支払いが遅れて、仕入先からの信用を失う。

最悪、倒産してしまうリスクもあります。

そのため、運転資金の調達は非常に大事なことです。

資金調達方法としては、例えば下記のものがあります。

・日本政策金融公庫

・銀行からの融資

・ビジネスローン

・手形割引

・ファクタリングサービス

それぞれご紹介します。

日本政策金融公庫

100%政府が出資している金融機関であり、ビジネスを始めたばかりでも、無担保・無保証での貸し付けが可能な場合があります。

決算書の内容だけでなく、事業主のビジョンや熱意といったものも判断材料になるため、通常の金融機関では融資が難しい場合でも対応してくれる可能性があります

補助金・助成金の活用

省庁や自治体といった組織が補助金・助成金の募集をかけています。

補助金・助成金は返済不要であることが大きなメリットです。

通常、合格するには条件が設定されており、金額の大きい補助金は事業計画書を重視する場合が多いです。

応募のための申請書も書かないといけず、手間にはなりますが、返済不要で資金が確保できることは魅力のため、応募を検討しましょう。

認定を受けている税理士であれば、申請を代理で行ってくれますし、補助金・助成金の合格についてアドバイスも受けられます。

自分で申し込むのが大変であれば、税理士に依頼するのも手です。

銀行からの融資

いきなり地方銀行や、みずほ、りそなといった大手銀行から融資を受けることは難しいため、まずは信用金庫や信用組合で融資を受け、実績を重ねることで地方銀行から融資を受けられるように準備をすすめておくといいです。

地方銀行では決算書を重視するため、融資を受ける際は税理士に相談し、財務的な安定性を意識して決算書を作成するようにすることをおススメします。

なお、大手銀行は事業規模が一定以上の企業しか相手にしないため、融資を申し込む際は、信用金庫や信用組合、地方銀行を狙いましょう。

ビジネスローン

ノンバンクの提供する事業性ローンがビジネスローンにあたります。

審査は最短即日で行ってくれる金融機関もあり、急な資金調達が必要な時に役立ちます。

その反面、金利がかなり高く設定されているため、あくまで短期的な資金の調達の際に利用するに留めておきましょう。

手形割引

売り上げの代金を手形で支払われた場合、手形に指定された入金日まで待つ必要がありますが、金融機関に手形を渡すことで、入金日前にお金が手に入ります。これを手形割引と言います。

ただし、手形割引をした場合、手数料が引かれることに注意してください。

ファクタリングサービス

手形のみならず、売上債権の買い取りや、売上債権の入金を保証してもらえるサービスをファクタリングと言います。

これにより、資金調達を素早く行えたり、売上債権の貸し倒れを防いだりすることができます。

ただし、ファクタリングには手数料がかかります。

また、取引先の信用状態しだいではファクタリングが行えない場合があります。

さらに、高額な手数料を取る悪徳業者も存在し、かえって資金繰りが悪化するケースもありますので、利用の際はご注意ください。

運転資金回転期間を改善するには

運転資金回転期間が長いと、必要な運転資金の額が多くなり、資金繰りが困難になります。

そのため、運転資金回転期間を短くするのが望ましいですが、どうすれば期間を短くできるかをご説明します。

売掛金の入金、買掛金の支払を改善する

取引先と交渉し、売掛金の入金までの期間を早くしてもらうことと、買掛金の支払までの期間を長くしてもらうように働きかけましょう。

販管費を見直す  

家賃の支払いや水道光熱費など、毎月かかってくる販管費について見直し、より安くする方法を考えましょう。

例えば家賃の安いところに引っ越す、接待交際費を削減する、広告宣伝の仕方を見直すといった方法が考えられます。

こうした費用は比較的削減しやすく、運転資金回転期間をすぐに改善できるため、まずは販管費の見直しから始めてみることをおススメします。

売上原価の削減をする

仕入れた商品や材料のコストダウン交渉、仕入先の選定を行ったり、作業を見直してムダを省いたりして売上原価を削減するようにしましょう。

売上原価を削減することで仕入債務や経費が減り、用意する必要のある運転資金を減らせます。

売上高を上げる

運転資金回転期間は売上高を上げると短くなります。

単純に売上が多い方が入ってくるお金も増えるので、最もシンプルで直接的な方法になります。

まとめ

自分のビジネスを続けていく上で、運転資金を確保しておくというのは最重要になります。

まずは、現状必要な運転資金はどれくらいなのかを把握することから始めてみましょう。

必要な運転資金の額が少なくなるように、当記事で説明した改善策を打ちつつ、運転資金の確保をするよう動いてください。

通常、低い利率で貸してくれるところは審査も厳しくなるため、審査のための準備や審査自体に時間がかかります。

そのため、できるだけ早く運転資金を確保する必要性を把握して、資金調達活動を始めるようにしてください。

即日融資のビジネスローンや、手形割引、ファクタリングといったサービスは高い利息や手数料を取られます。

そうなると、売上を上げても手元に入ってくるお金が少なくなり、結果として運転資金がどんどん不足していくという悪循環に陥ることに繋がります。

日本政策金融公庫や補助金・助成金、信用金庫や信用組合、地方銀行といったところから資金を調達できるよう働きかけることをおススメします。

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