会計

組織再編の税務リスクについての備忘録

今回は、少々趣向を変えまして、「論点整理で見落としを防ぐ 組織再編の税務リスク発見ガイド(第2版)」を読んで大変勉強になったので、その中から気になる論点について、備忘録的に記載をしていこうと思います。

組織再編の手法変更

組織再編の手法を変更させると、課税関係が大きく変動する場合があります。

例えば、特定の事業を新設分社型分割をする場合、事業の譲渡先と譲渡元の親会社の間に支配関係が存在せず、税制非適格分割になってしまいます。

また、この場合、分割元法人に譲渡損益が発生します。

支配関係のある法人間の適格合併・適格分割・適格現物出資・適格現物分配では、繰越欠損金の引継制限・使用制限や特定資産譲渡等損失の損金算入制限が課されます。

一方で、株式交換や株式移転では、こうした制限はありません。

そのため、適格合併・適格分割・適格現物出資・適格現物分配では様々な情報を収集し、多角的な視点で検討をしていく必要があります。

組織再編の日程_損金算入制限の判定

適格合併では、原則として被法人合併の繰越欠損金を合併法人に引き継ぎますが、引き継ぎ可能な繰越欠損金は、被合併の日前10年以内に開始した各事業年度において生じた繰越欠損金に限られます。

そのため、例えば組織再編の日として予定していた日が法務局の閉庁日であった場合、組織再編の日を変更せざるを得なくなり、上記の10年以内制限に引っかかる場合があります。

新設合併・新設分割・株式移転は登記の日が組織再編の日となります。法務局の閉庁日は登記申請を受け付けていません。

また、組織再編の日の属する事業年度開始の日も重要です。

支配関係のある法人間の適格合併で、合併法人と被合併法人との間に、

・合併法人の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日

・合併法人の設立の日

・被合併法人の設立の日

これらのうち、最も遅い日から継続して支配関係が無い場合で、かつみなし共同事業要件をみたさない時は、繰越欠損金の引継制限・使用制限や特定資産譲渡等損失の損金算入制限が課されてしまいます。

特定資産譲渡等損失の損金算入が制限される期間は、例えば合併のの場合、適格合併の日の属する事業年度開始の日から、原則として以下のいずれか早い日までとされています。

・合併事業年度開始の日以後3年を経過する日

・合併法人との間に最後に支配関係があることとなった日以後5年を経過する日

以上の理由から、例えば合併を延期した場合に被合併法人の繰越欠損金が切り捨てられないか、組織再編を前倒しした場合に繰越欠損金が切り捨てられないか、といったことがを検討する必要があります。

適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日

繰越欠損金の引継制限・使用制限や特定資産譲渡等損失の損金算入制限が課される可能性があるため、上記日の判定は非常に重要になります。

これは合併の日の5年前ではありません。

例えば、×6.1.1に合併し、支配関係発生日が×0.5.2だった場合、単純な年数換算だと、検討開始時点で5年超の支配関係がありますが、適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日は×0.4.1になるため、5年前の日から支配関係がなしとなります。

合併と分割

適格要件には、再編当事法人の事業に着目したものがあります。

支配関係がある場合の組織再編では事業継続要件、共同事業を行う場合の組織再編では事業継続要件、事業関連性要件、事業規模要件が課されます。

この事業継続要件は、合併と分割で相違点があります。

合併は被合併法人の事業全体を包括的に承継することから、被合併法人の主要な業務が合併後も合併法人において引き続き行われる見込みがあることが必要です。

一方、分割は分割法人の事業の一部を移転する手法であることから、移転対象の事業が分割法人において主要な事業であることを求めていません。

まとめ

以上、組織再編に関する本書について、よく把握しておいた方がいい論点について、備忘録的に記載いたしました。

本書では、これ以外にも組織再編に関する税務リスクについて、様々な論点と、その論点整理のコツが記載されています。

非常に学びの多い本ですので、組織再編に携わる方は、ご一読をおすすめします。

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