皆様こんにちは。
本日は簿記2級向けに、引当金について解説をしていきます。
引当金というものがあるのはわかったけど、そもそもなぜ引当金を
たてるのかわからない、といった方向けの内容になっています。
目次
引当金の種類
引当金にはいくつもの種類があります。
例えば、売掛金の貸倒に対してたてる貸倒引当金。
これは売掛金や受取手形などの債権について引き当てるものです。
実際に貸倒れがおきた実績率に基づいて引当金の計上率を算定し、債権にこの率を乗じて計算するのが通常です。
ただし、貸倒れリスクが高い債券については、個別に金額を見積って引当する必要があります。
他にも、賞与を払うために積み立てる賞与引当金、職員の退職金について引き当てる退職給付引当金。
将来の建物修繕について積み立てる修繕積立引当金といったものもあります
では、そもそも引当金はなぜ積み立てるのでしょうか。
引当金を積み立てる理由
会計には発生主義と保守主義というものがあります。
発生主義とは、費用が発生する原因が生じたタイミングで費用を計上する、というものです。
引当金でいえば、例えば賞与引当金がわかりやすいでしょうか。
1~6月分の賞与に対する引当金を積み立てるとして、実際に1月、2月と賞与対象月が経過した段階で、
賞与引当金を積み立てるわけです。これを発生主義といいます。
また、保守主義の原則とは、企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、
これに備えて適当に会計処理をしなければならないという原則です。
費用は発生を認識できる時点で早くに計上する、という原則になります。
2つの原則に基づいて計上されるのが引当金ですが、これは、一定の要件を満たした場合、計上しなければなりません。
その要件とは4つあって
「将来の特定の費用または損失であること」「発生が当期以前の事象に起因すること」「高い発生可能性があること」「金額が合理的に見積り可能であること」
になります。
将来の費用や損失で、発生原因が当期以前にあって、発生可能性が高く、金額が合理的に見積れる場合は引当金を計上しないといけないというわけですね。
例えば貸倒引当金。
毎期、売掛金のうち、1%程が貸倒れになり回収ができないということが、これまでのビジネスで分かっている場合。
売掛金100万円あったとしたら、そのうちの1%である1万円を貸倒引当金として計上しなければいけないということです。
ちなみに、上記4要件に当てはまるもの。一定以上の確率で将来の費用発生が確実視される場合、引当金を強制的に積み立てる必要があったりします。
税務上の貸倒引当金
法人税法上は、実は引当金計上がほとんど認められていません。
税務上は債務確定主義といって、実際に費用としての支出が確定したときしか債務を計上できません。
見積り金額である引当金は計上が認められないことになります。
税務上認められているのは貸倒引当金のみになっています。
これは税務においてもし引当金の計上が認められると、引当金をたてることで費用を増加させ、
恣意的に税金を減額させることが可能になってしまいます。
ですから、引当金の計上は厳しく制限されているというわけです。
まとめ
以上が引当金についての一通りの知識となります。
紹介したものの他、例えば売った商品が一定率返品されていることが過去の商売から
合理的に見積れるのであれば返品調整引当金を計上しなければなりません。
このように、上記で説明した4要件に当てはまっているものはないか、という視点でみていただき、
引当金を計上するかの検討をすることが大事になります。
会計基準に則った適正な会計処理をしないといけない上場企業や会社法上の大企業では、
この計上が義務付けられています。
一方で、中小企業でも「中小企業の会計に関する指針」で、引当金の要件に該当したものは
引当金として計上しなければないらないとされていますが、
この指針自体に強制力はありません。
多くの中小企業は、利害関係者が限られているため、
引当金は税務会計に従って、貸倒引当金のみを計上しているというところが多いのではないでしょうか。
上場企業や大企業では計上しなければならない引当金ですが、中小企業の世界では
経理処理できるマンパワーも限られてきますし、そこまで厳密な費用処理をしなくても
影響を受ける人物が限られてくるため、引当金の計上は最小限にしているというところが多いわけですね。
それでは、また。