実際の税務調査でよくある調査官の質問を勘定科目毎に抜粋。
その質問の意図を明らかにし、会社が行う対応策について述べているものです。
なお、著者が国税不服審判所において国税審判官として勤務した経験のなかで、これまでの税理士としての視点とは異なる視点で感じ、考えたことを主な内容としてまとめた”元審判官によるコーチング”が記載されています。
目次
税務調査対策のポイント
日頃の書類整備こそ最大の税務調査対策になります。
書類整備のポイントとしては
・契約書で取引成立の事実を明らかにする
・社内稟議書、取締役会議事録で取引を行った理由と意思決定を明確にする
・法令により作成することが要請されている書類は必ず作成する
・各種社内規定、社内ルールを作成し、それらに則った運用を行う
・受注伝票、発注伝票、出荷伝票、納品書、検収書、見積書、請求書、領収書、入金伝票等、取引の一連の流れを示す書類の整理保存と、帳簿との整合性を確保する
・時価算定資料や計上金額の根拠資料は必ず作成し、保存する
こうした書類整備をする理由としては、証拠書類を整備して取引の法的根拠を明確にすることで、取引実態の解釈を一つに絞り、調査官の解釈を会社側の認識と一致させるためです。
この他にも、証拠書類の整備が重要な理由として、以下があります
①税務当局は税務訴訟に負ける否認はしてこないこと
→これは法的根拠に裏付けされた取引の証拠書類が完璧に整っているものが該当します。
②現場調査官が上司に報告しやすくなること
→調査官は、現地調査で明らかになった事項を所属に戻って上司に報告し、その後の調査方針に従って指示を受けます。
現場調査官が上司に報告しやすいような証拠資料を作っておくと、その後の調査がスムーズにすすみやすいです。
調査官の質問と対応・対策(貸借対照表編)の一部抜粋
実際に本書ではどのような形式で対策が書かれているのかを紹介するため、ここでは本書の一部抜粋を記載いたします。
質問:注文書、見積書、受注伝票、売上伝票、出荷伝票、納品書、検収書、請求書、領収書等、売上に関する帳簿書類をみせてください。
調査官が知りたいこと
1.受注から代金決済までの流れは
2.売掛金回収サイトは。売掛金残高に異常なものはないか
3.翌期にカード会社から入金されたもののうち、当期分の売上はないか
対応と対策
1.帳簿書類を整備し、書類上の整合性をチェックできる業務フローを構築する
→調査官は、物やサービス提供の流れとお金の流れにつじつまの合わないところはないかを調査します。
注文書、見積書、受注伝票、売上伝票、出荷伝票、納品書、検収書、請求書、領収書等から物やサービス提供の流れと代金決済状況を把握し、帳簿上の金額と照合することにより取引全容の確認を行います。
そういった整合性のチェック体制、受注から資金決済までの業務フローを構築するとともに、日常業務の中でそれらが正しく運用され、ミスの発生や操作可能性の介入予知がないことを調査官に示すことが重要になります。
2.売掛金発生時期と発生金額、回収予定を常に把握し、異常な残高はその理由を説明できるようにする
3.クレジットカードによる売り上げは、カード会社からの入金日ではなく、売上発生日に計上する
調査官の質問と対応・対策(損益計算書編)の一部抜粋
質問:X年3月期(調査対象期)の翌期であるX年4月、5月の売上請求一覧をみせてください
調査官が知りたいこと
1.売上計上基準の確認、変更の有無は
2.締め後売上、期ずれ等、X年3月期の売上となるものはないか
対応と対策
1.自社の売上計上基準を確認し、計上基準の変更があった場合には、合理的な理由によるものであるかどうかを確認する
2.計上基準に基づき、期ずれ等、売上計上漏れがないかどうかを確認する
→税務調査においては、調査対象期の翌期開始後1,2か月程度の請求書などを確認することで、調査対象期の売上掲揚漏れの有無の確認が行われます
元審判官によるコーチング
従業員が横領した商品の売却による所得の帰属
→法人と従業員のいずれに取引の対価が帰属するかは
①取引の態様と法人の事業内容との関係
②従業員の法人における地位及び権限
③取引の相手方の認識
④取引の対価の費消状況等を総合的に考慮し、判断されることになります。
まとめ 本書について
上記で抜粋したように、調査官のよくある質問、調査官の質問の趣旨、その対応と対策、元審判案によるコーチングといった流れで、科目別に説明された対策集となります。
貸借対照表では27項目、損益計算書では36項目に及ぶ科目の例示がなされています。
税務調査においてとにかく大事なのは日頃の書類整備としたうえで、各質問をされた上での対策を具体的に例示した対策本となっています。
税務調査についてのインプットを行いたい方は、ぜひご一読ください。
それでは、また