先日の4月8日、2021年度修了考査の合格発表がされましたね。
2021年度の対受験者数合格率は64.6%と、例年に比べ大きく上昇しました。
合格率が高くなったからといって、誰しもが合格できるわけではありません。
しかし、修了考査はしっかりと対策し、確実に合格を狙っていくのが可能だと思っています。
そこで、今回は修了考査の対策方法について、私の実体験も交え、書いていこうと思います。
目次
修了考査対策に時間をかける
修了考査に合格するための、一番単純かつ重要なコツは
”可能な限り早くから勉強を始める”
ことです。
極論を言えば、このブログを読んだ瞬間から勉強を開始していただきたいです。
4-5月は会計士の繁忙期にあたるため、ガチガチに勉強するのは難しいかもですが、今のうちに予備校に申し込んでおく、時間を見つけて講義動画やテキストを読んでみる、ということは始めておいたほうがいいでしょう。
このブログで主に想定している人は、すでにインチャージをやっていて、その傍らに修了考査を受験する人。
つまり、相当程度忙しい人、中々満足に勉強時間を確保できない人に向けて、対策を考えていきます。
ここでは修了考査で合格するために必用な勉強量について、予備校のテキストと講義を基準に考えておきます。
まず、予備校のネット講義は全て受講し、テキストは全て読み込みましょう。
恐らく予備校では、論点の重要度別にA,B,C等重要度が分けられています。
重要度Bのものまで、は頭に入れましょう。
講義の受講と重要度Bの論点を頭にいれるだけでも相当程度時間がかかります。
「仕事が忙しくて、そんなに勉強時間取れないよ」という方も大勢いるでしょう。
そのために、”可能な限り早くから勉強を始める”というのが大事になってくるわけです。
土日にも仕事がある人でも、毎週というわけではなく、空いている休日はあるでしょう。
残業が常態化している人でも、例えば朝少し早く起きて勉強する、たまたま早く帰れた日に勉強する。
といった、わずかな時間を見つけて、長期的にコツコツ勉強していくことが、確実な合格を呼びます。
修了考査は例年12月にあるので、今(4月)から勉強すれば8か月の勉強時間が取れます。
そんなに勉強しなくていいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、今回の記事では、
そこまで勉強すれば、そりゃあ受かれるだろ!というレベルまで勉強して、確実に受かることを想定しています。
修了考査の勉強方法には、神話があります。
「受験日1か月前から勉強すれば合格できる」
といったものです。
しかし、これは元々地頭がすごくいい人か、インチャージをやっておらず、比較的時間が取りやすい人しか通用しないものだと思った方がいいでしょう。
一般的な能力で、かつインチャージをやっている人が合格を確実にするには、とても時間がたりません。
予備校の修了考査の講義を受けるだけでも相当時間がかかりますし、試験範囲を網羅したテキストを読み込むのもかなり時間がかかります。
受験日1か月前からの勉強では、物理的に時間が足りないのです。
試験に出そうな範囲を超効率的に勉強する、であったり、会計監査六法で勉強する、といった意識の高い勉強方法ははなから捨てて、予備校の講義とテキストを地道に勉強する、ということを念頭におきましょう。
そもそもインチャージをやりながら考査を勉強する超多忙な人は、頭のキャパも相当程度消費しているでしょうから、勉強方法についてあれこれ考えているヒマや余裕は無いと思います。
”勉強方法を考える手間を無くす”、これが予備校を使用する最大のメリットだと思います。
素直に予備校を活用して、相当期間、勉強に時間を取る。
極論を言えば、これが一番確実な合格方法と言えるでしょう。
会計実務の勉強方法
会計実務には、相応の時間をかけて臨んでください。
まず、会計実務の勉強を、計算と理論に分けて考えます。
計算については、会計士論文式試験の時の計算力を取り戻す、ことを基準にして勉強しましょう。
予備校テキストの計算問題を、コツコツ地道に解いてください。
それだけで、計算に関しては乗り切れると思います。
会計実務の考査問題は、理論の方が計算より難しいので、計算で点をとって、理論は守りで点数を落さないようにする、という感覚で勉強するのがよいでしょう。
理論については、まず予備校のテキスト問題を頭に入れるほか、最近出た重要トピックが出題されることが多いです。
2021年度試験で言いますと、収益認識に関する会計基準や、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い等です。
最近の会計トピックについては、意識してキャッチアップしていき、趣旨を理解しておくのが良いでしょう。
監査実務
予備校のテキストを読み込み、論文式レベルの知識で忘れているところは確実にインプットしておきましょう。
また、監査実務は架空の事例を出し、その事例についての監査リスクや実施する手続、実行したい手続を会社が拒否した場合等、実際に監査を行うにあたって突き当たる論点が出題されます。
これはインチャージが行う、想定するリスクや、実施する手続といった監査計画ともろに被っている範囲です。
インチャージ経験のある方は、実際に自分がたてた監査計画のことを思い出しながら問題を解いていくと、安定した得点が見込めるのではないでしょうか。
インチャージ経験が無いという方でも、先輩に頼む等して、監査計画手続の作業をやらせてもらう等、実務経験を積んでおくのが良いでしょう。
実際の監査現場で行われている監査業務の基本的な対応や、その作業の意味を考えながら仕事をしていると、監査実務への対応がしやすくなります。
例えば2021年度の監査実務では「売上債権の確認手続の中で未回収の確認状があったため、代替的な監査手続を実施している」際の論点について聞かれています。
これは、実際の現場でどう対応しているかを思い出せば解ける論点なので、そういった意味でも、普段の監査手続から、修了考査のことを意識しておきましょう。
監査法人に勤めている以外の方は、そういった点では不利になってしまうかもしれませんが、対策としてはテキストと答練を通して、基本的な解答の型を身につけましょう。
基本の論点をしっかり押さえることが、合格への近道です。
税務実務
監査法人勤めですと、税務に関わることが限られているため、この科目に解きづらさを感じているひとも多いのではないでしょうか。
私としても、税務実務が修了考査で最難関なのではないかと思います。(あくまで個人の感想です)
しかし、税務実務の計算について、会計士論文式試験のレベル感を取り戻していれば、ある程度対応できます。
例えば別表4の作成、消費税の算定といったことは論文式試験レベルの知識でもかなり対応できるので、地道に計算練習をして、このレベルを取り戻せるようにしましょう。
ただし、計算問題でも新しい論点のものが出るので(後述します)、そういった新論点で重要なものはおさえておきましょう。
大変なのは理論です。
国際的二重課税や国際的租税回避行為、グループ法人税制、組織再編行為やみなし配当等々、追加で覚えないといけない部分がかなり多いです。
試験範囲は広大になっています。
予備校のテキストでも相当の分厚さになっており、重要論点のうち、どこから出題されるのかの予測も立てられません。
対策としては、とにかく予備校のテキストをガチガチにやり込むしかありません。
私も税務実務の理論に一番勉強時間を使いました。
理論を捨てたり、ヤマを張ることは避けましょう。足切り点数を割ってしまう可能性が高まります。
また、2021年度修了考査では、適格合併に関する計算問題も出題されています。
追加で覚える論点からも計算問題は出るので、そういった箇所の計算練習は落さないようにしましょう。
計算、理論共に追加で勉強する部分がかなり多く、内容も難化しているので、相当程度時間を使って勉強しましょう。
少なくともインチャージをやっている方で、税務実務勉強を1か月で完了させるのは、ほぼほぼ無理です。
税務実務にはとにかく警戒してください。
経営実務
恐らく1番点を取りやすい科目です。
この科目を得点源にして、合格点数を稼ぎ出す戦略が良いのではないでしょうか。
点数が取りやすい理由として、売上債権回転率等の財務分析指標の計算が聞かれます。
普段の監査でこういった財務分析には多く触れていると思いますので、こういった問題はかなり解きやすいのではないでしょうか。
2021年度試験では、他にFCF法を使った企業価値や株主価値等も聞かれています。
会計士論文式試験レベルの計算問題ですので、予備校テキストの問題を解いて、カンを取り戻しておくといいでしょう。
追加で勉強しないといけない論点がコンピュータに関する理論です。
これは、大問で1つは出題される論点なので、必ず押さえておきましょう。
これをおろそかにすると、足切りの可能性が高まります。
しかし、コンピュータに関する理論のボリュームが少ないことと、実務のIT監査と被った論点が出題される箇所があるので、勉強はしやすい部分かと思われます。
大事なことは、コンピューターに関する理論は絶対に勉強しておく、ということです。
職業倫理
これが意外と曲者です。
というのも、倫理規則等、覚えていないと解けない問題が出る場合があるからです。
この科目自体の勉強ボリュームは少なく、勉強時間自体はそこまで費やさなくても解けてしまう部分があります。
2021年度試験では、非保証業務の提供の可否を検討する際の重要な概念である「経営者の責任」の論点といったものが出ているのですが、ようは職業倫理の阻害要因に関する論点であり、法人の研修でもやっている箇所なのではないでしょうか。
事務所研修でも取り扱う部分があるなど、点数が比較的取りやすい科目ではあるので、この科目で合格点を稼ぐつもりでいくと良いでしょう。
しかし、前述したとおり、覚えていないと解けない問題があるので、油断して勉強しない、ということは無いようにしましょう。
まとめ
ここまで説明してきましたが、各科目との向き合い方で考えると、経営実務と職業倫理で点数を稼ぎ、会計実務・監査実務を落さないように基礎点を取る。そして税務実務についてはひたすらガチる、となります。
最低限費やさないといけない勉強時間を順に並べると、税務実務>>会計実務>監査実務>経営実務>職業倫理となるでしょう。(もちろん個人差はありますが)
とにかく早く始めることが大事です。
今から8か月勉強すれば、インチャージで多忙な中でも、十分合格点を狙っていけるのではないでしょうか。
仮に修了考査に落ちると、会計士登録が1年遅れます。
監査法人では会計士登録がシニアへの昇格要件になっているため、修了考査に落ちると、その分出世が遅れます。
転職や独立を考えている人にしても、1年間つまづいてしまうのは痛いでしょう。
そのため、確実に合格できる方法を取りましょう。
勉強を早く始め、予備校の講義とテキストを網羅する。
「そこまで勉強していれば、そりゃあ受かるだろう」という程に対策しましょう。
会計士試験合格者の皆様、どうか勉強を頑張ってください。
それでは、また