今回は会計士を目指している方向けの内容になります。
皆さんは”主査”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
監査法人ではクライアント様毎にチームを組み、監査を行います。
そのチームの現場主任といった立ち位置が主査になります。
個人的には、この主査の業務が監査の本番だと思っています。
その理由を以下で述べていきます。
目次
どっと増える主査の仕事(現場編)
主査は現場主任といった立ち位置と書きましたが、現場への往査日程を組み、事前に誰をアサインするかの要望を出し、仕事を割り振るのが主査の仕事です。
当然、現場でのチームスタッフに対する指示や、スタッフが作った監査調書を査閲し、修正が必要な箇所については適せんスタッフに修正指示を出していきます。
これだけだと簡単に聞こえるかもしれませんが、例えば全体の総括的なレビューや、会計士の判断が必要な複雑な論点といったところは大抵主査が調書を作成します。
これは、主査が主に監査現場全体の状況を掴んでいるため、総合的な理解が必要な箇所は主査がやるのが一番効果的だからです。
つまり、自分でも調書を作りつつ、他者の作った調書も見る、ということです。マルチタスクですね。
その他、パートナー(上司)が現場にきて、定期的にクライアント先の部長等、上役と会計論点等の話し合いをするため、パートナーと上役の予定を聞き、日程調整をしなければなりません。
なお、いつ監査に行って、どれくらいの期間監査するのか、事前に準備してもらいたい資料はなにかをクライアントと相談するのも主査の業務です。
どっと増える主査の仕事(事務所編)
ここまでお話したのが、クライアント先の現場での業務です。
ただし、これ以外にも業務はまだまだあります。
まず、監査契約というものをクライアントと毎年締結するのですが、その契約書の原文作成を主査が行い、必要な監査法人内部での承認を得ます。
会社経営者の前で、監査の概要を説明し、先ほどの契約書についての説明をし、クライアント様にお渡しします。
この説明も基本的に主査の仕事だったりします。監査法人で会計士をやっていると、人前で話す場面が意外と多いのですが、これもその1つです。
そして、監査計画の立案作業を行います。正直これが一番大変だったりするのですが、リスクの評価検討、特別な検討を必要とする項目の識別、企業環境の理解のための書類作成、内部統制の監査内容、リスクの識別、リスクに応じた監査手続きの策定等、まだまだ書ききれていないですが、こうした作業を行っていきます。
これらの検討事項は全て書類化し、パートナーの審査を受ける必要があります。
主査の仕事(審査編)
監査をするうえで、監査法人内部で必ず審査を受けなければなりません。年度の審査は期末監査前に行う期中審査と完了審査が2つ。さらに監査後の意見審査という審査を会社法、金商法ごとに1つづつ受けなければなりません。
上記で説明した監査計画の書類はこうした審査で使う資料のため、監査人は毎期毎に、この膨大な資料を作成しなければなりません。
さらに、監査は年度監査だけではなく、四半期監査もあるわけで、四半期毎にも審査を受ける必要があり、もちろんそのための資料作成も主査の仕事になります。
なお、審査を受ける前に、クライアント担当のパートナーに資料を見せ、監査計画がこれで問題ないかのミーティングを開きます。
こうしたミーティングや審査のスケジュール管理もまた主査の仕事です。
つまり主査は、一年のうちどの期間にどんな手続が必要なのかを通年で把握し、前もって予定をおさえておくスケジューリング能力が必要となってきます。(パートナーは多忙で日程が詰まっているため、早めにスケジュールをおさえておかないと大変なことになります。)
さらに、1年の監査終了時の課題事項や監査の結果をクライアントに伝える仕事、クライアントの定期株主総会への参加、といった業務もこなします。
まとめ
以上が主査のざっくりとした仕事です。主査に求められているスキルは多様で、スタッフや上役とのコミュニケーション能力、調書のレビュー能力、書類の作成能力、スケジューリング能力といったことが求められます。
上記作業は全て平行的に行われることに加え、こうした案件が1件だけではなく、2件3件と同時に降ってきます。よって、主査はマルチタスクが基本となります。
案件が2,3件以上積み重なってくると、スケジューリングが大変となり、どの案件で誰の予定をおさえておくべきなのか、混乱してきます。
このように、主査の仕事は膨大で、多様なスキルを求められます。これが、主査業務が監査の本番だと述べた理由です。
この膨大な仕事をこなすとなると、とても定時では終わらず、主査になると必然的に残業が増えていきます。
もちろん、審査資料作成の一部をスタッフに割り振るといった業務の分割は可能ですが、スケジューリングや複雑な会計論点の整理等は中々スタッフに割り振るのは難しく、主査の負担はどうしても重くなります。
こういった主査業務を会計士が任せられるのは、大抵入所して3年目以降、補修所や修了考査が終わり、会計士資格を取得できるタイミングになってきます。
正直な話をいたしますと、上記業務の過酷さにしり込みをし、会計士資格取得と同時に、逃げるように監査法人を退職する方や、1年主査をやって嫌になり辞める方は一定数います。
ただし、こうした業務をこなすことで、監査の全体像を掴むことができ、自分のやっている手続きが監査全体でどういった役割をはたしているかを理解できるため、監査人としての能力は飛躍的に上がります。
また、スケジューリング能力やマルチタスク能力も成長していくでしょう。
こういった主査経験を積んだ会計士というのは監査法人では即戦力となるため、監査法人中途採用の条件が、他の監査法人勤務5年以上のところも結構あります。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。正直今回の投稿は、専門用語が多く、とても読みづらかったかと思います。それでも読んでくださり、誠に感謝しています。
主査の仕事を知ってみて、いかがだったでしょうか。
それでは、また。