会社の経営者はもちろんのこと、個人事業主の方々も節税は考えると思います。
本書では、そうした方々を対象に、節税の仕方についての解説本となります。
目次
どんな本なの
まず本書では、法人化することでの節税メリットについて解説しております。
ざっくり言うと、所得300万円が法人化の検討ラインと述べています。
これは税金で大きなウェイトを占める”所得税”と”法人税”の節税方法によるものです。個人所得税の最大税率は非常に大きく、それに比べると法人税率が低い。また、法人税では経費化できるものが多く、その分の節税効果が得られます。
よく「売上1,000万円を達成したら法人化を検討すべき」と言われていますが、これはあくまで”消費税の課税事業者”となるラインであり、負担が大きい所得税と法人税についての検討が抜けているため、本書ではこの説は嘘であるとはっきり述べています。
お金が無くなる節税
一般的に節税といえば、現金支出を伴うものが多いです。
しかし、会社の内部留保が減ってしまう節税は、納税金額が減る分、同じくらい会社のキャッシュを減らしてしまいます。
”節税目的”のために無駄な浪費に走ってしまうパターンが多く、このようなお金がなくなる節税を行ってしまうと会社の資金繰りはすぐに悪化してしまいます。
会社を倒産させないためには、資金繰りというのは特に大事な要素であり、これを悪化させるような過度の節税を本書はおすすめしていません。
”会社の黒字化が先、節税は後!”と本書内ではっきり述べられています。
また、ちまたで言われている節税方法の中には、例えば旅客機のオペレーティングリース、足場レンタル、コインランドリー投資、海外不動産投資等等があります。
多額の投資を行い、それを減価償却費で経費化し、大きく節税をし続けるというものです。
最終的にはそのビジネスを売却して利益を得るのですが、結局その売却タイミングで課税されてしまいます。
それを防ぐために再投資をしなければならないのですが、結局これは”課税の繰り延べ”に過ぎず、実際には節税になっていません。
具体的な節税方法
本書では、以上の注意点を踏まえた上で、11の節税手法を説明しています。
役員報酬の経費化、決算変更、小規模企業共済、自宅・賃貸の社宅化、出張旅費日当等、様々なものがあげられます。
具体的な方法については本書に譲りますが、この他にも役員退職金での節税というのも説明されています。
まず退職金は会社では経費として計上できます。そして、所得税に関して、退職時にかかる”退職所得”は通常の報酬にかかる”事業所得”や給料にかかる”給与所得”に対してかかってくる税金が小さいです。退職所得は課税額の計算において、所得額の2分の1で算定されることが大きいからです。
しかし注意していただきたいのは”過度な節税はNG”ということです。
上記でも述べたように、お金が無くなる節税を行い、無理な投資を続ければ会社の財務体質はどんどん悪化し、BS純資産が薄くなります。
そうなると、資金調達時の金利が不利になったり、他社と取引する際の与信審査面でも非常に印象が悪くなります。
そうしたことを防ぐためにも大事なのは、あくまで会社の黒字化が先、節税は後ということです。
この教訓について知れるだけでも、本書を読む価値はあると思われます。
まとめ
会計士の仕事をしていると、「この取引は無駄に見えるが、節税目的だな」ということや、「この取引を使って節税できるのに会社は気づいていないようだ」といったことがあります。
本書で学んだ大きな教訓として、節税はなんでもかんでもやれば良いというわけでは無いし、節税目的で会社の儲けを少なくして純資産を薄くすれば、会社の与信面での悪影響は避けられない、ということです。
また、一見して節税に思えることでも、結局は税金の繰り延べにすぎない方法ということも多くあります。
実際に会社を運営して税金対策を考える時には、本書の注意点に留意し、無理のない節税を行っていくのをおススメします。
それでは、また。