皆さんは仕事上、あるいはプライベートでも、何かの問題について議論することがあると思います。その際、実りある会話、何かしらの行動に繋がる会話になっておりますでしょうか。
”結局どちらかの考えを一方的に採用してしまった”、”決めた物事が全然的を得ていない気がする”、とこんな事態に陥ったことはないでしょうか。
こうした時、有益な会話を行う再現性の高いメソッドがあれば、とても意義があると思いませんか。
例えば、仕事上で無駄な会議を繰り返したり、友人間で上手くいかなくなったり、ということを防げると思います。
目次
どんな本なの?
年間報酬3,000万円を15年以上続けてきたコンサルタントである筆者が、クライアントに行っている”思考整理術”についてかかれた本です。
筆者は自身のコンサルタント経験をもとに、一つの結論に達しています。
それは、クライアントから「教えて欲しい」と言われて、それを額面通りに受け取ってこちらから答えを教えても、クライアントは喜ばないということです。
クライアントとは、この場合社長になるのですが、元々社長というのは、人にあれこれ言われるのを嫌う人が多く、そういう人に安易に答えを教えても、コンサルタントとして受け入れてはもらえないのです。
では、どうすればいいのか。それは、相手に適切な質問を投げかけ、クライアントの思考を整理することで、クライアント自身に課題や答えを発見してもらうという方法を取ることです。
この、”自分が答えを言うのではなく、適切な質問を投げかける聞き役になれ”というのはビジネス本でそれなりに聞かれる原則だと思います。
この本の特筆すべきところは、「では具体的な方法論として、どんなことを意識して質問をすればいいのか」、をコンサルタントである作者自身の経験をもとに、相当細かいメソッドにわたって紹介していることです。
著書である和仁達也氏の著作は何作か読ませていただいているのですが、正直「そんなことまで教えていいの!?」と思わず心配になるほど、具体的なノウハウを書いて下さるのが特徴です。
この本は、思考整理術の本なので、自問自答して、自身の思考整理を行ってもいいですし、コンサルタントではない人でも、例えば職場でのコミュニケーションや、プライベートでの家族・友人との相談事にも使える内容となっております。
思考整理の4ステップ
この本で書かれている思考整理のステップ4つがあります。
①タイトルを決める
②現状を知る
③理想を描く
④条件を探す(理想に近づくために
①タイトルを決める
タイトルを決める、といのは、「○○を○○するには?」という形で、思考整理の一番最初に共通認識をもつ道しるべとして必要なものです。
例えば、「自分に本当にあった仕事を見つけるには?」「子供とよい関係をつくるには?」といった言葉を当てはめることで、思考整理の方向性が見えてきます。
これはあくまで思考整理の道しるべとするものなので、仮置きでタイトルを決めてもいいですし、途中でタイトルを変えても構いません。
②現状を知る
現状を知る、に関しまして、思考のクセを見抜く、というテクニックが必要となってきます。思考のクセとは、守りに入ってチャレンジをためらう傾向のことです。
例えば「値上げを提案したら、契約を打ち切られるかもしれない」「契約を切られたら収入が下がってしまう。それよりは現状維持が安全だ」というような考え方です。
こうしたやらない道に流れるのを防ぐため、「もし仮に○○だったら」という仮置きの質問を使い、思考整理を進めていきます。
「仮に値上げをしたら、顧客はどんな反応をするのか」「仮に1社値上げが上手くいったら、今後他の顧客も値上げできる道が開けるか」といったことです。
こうした”仮置き”の質問を投げていくことで、行動のモチベーションを湧かすきっかけになります。相手ができないと思っていることでも、それは単なる思い込みであり、事実とは違う可能性がある、と気づかせていくことができます。これによって、相手の思考が整理され、実際の行動に繋がる流れを作り出せます。
本書では、こうした質問を投げかける際の注意点やNGワードについても言及しております。
③理想を描く
現状について聞きだしたら、次にどうなるのが理想的なのかを聞くことが次のステップになります。
いきなり「ではどうしたらいいか」と解決条件を考えると、できない理由をあげがちになってしまいます。
こうした思考のクセから抜け出すために、「もし仮に今、ここで言ったことはなんでもかなうのだったら、どうなっていたら良いと思いますか?」といった質問を投げかけてみましょう。
この時に気を付けてもらいたいのが、相手にアンサーを出してもらうことです。
自身の意見の押し付けをするのではなく、クライアントが答えを出すための、誘い水を慎重に出してあげることが重要です。
④条件を探す(理想に近づくために)
思考整理をして理想を導き出せたら、理想と現状のギャップを埋めるための3つの視点を提供します。
1能力、2行動、3環境です。
この3つの視点で思考を整えていくことで、「では具体的に何をしようか」、という行動が起こせるように導くことができます。
本書の構成
以上思考整理の4つのステップについて簡易的にまとめさせていただきました。
本書では、この4ステップの実践編として、実例が載せられています。
また、思考整理で相手のどこを見るか、という着眼点を7つ紹介しています。
他に、思考整理で行き詰った時に、ストーリーの力を借りるメソッド、思考整理の見える化をする具体的な方法論。思考整理のスピードを上げる引き出しの増やし方、といったことが言及されています。気になる方はぜひ本書をお読みください。
まとめ
この本の著者である和仁氏は、コンサルタントをする際、答えを教えるのではなく、相手との会話の中で、クライアント自身に自らの課題やそれに対応していくための方針を気づかせる、という方法をとっています。
”教える先生、になるのではなく、一緒に考えていく、社外のNo.2のような立場になる”というのが著者の考えです。
その考えに基づいた、著者の知識、方法論、ツールの使い方を本書では紹介しております。
本レビューの最初でも書きましたが、「そこまで教えていいの!?」と思わず心配になってしまうぐらいにノウハウがてんこ盛りです。
著者はこのほかにも複数本を書いておりますが、どれもノウハウが詰まった非常に有益な本になっております。
もし著者の和仁氏が書いた著作のどれかを気に入ったら、ぜひ同著者の他の書籍も読んでみて欲しいと思います。
著者が同じ本にありがちな、内容の重複や、結局同じような本じゃないか、といったことが殆ど無く、どれも参考になる内容ばかりです。
それでは、また。