今回紹介する本は、認知行動療法の入門書になります。
認知行動療法とは、認知に働きかけて、こころのストレスを軽くしていく治療法です。
私自身がうつを患っていることもあり、勉強用に購入しました。
しかし、この本は一般の方々(本書内では特にナース)のセルフケアの方法として、当該認知行動療法を紹介しています。
メンタルの症状を抱えているかただけではなく、一般の人々も自己防衛のために本書を読むことをおすすめします。
目次
アセスメント
認知行動療法のモデルを使って、自身の体験を理解したり整理するプロセスを”アセスメント”といいます。
アセスメントではまず、実際にストレスを感じている事項を想定して、ストレス状況とストレス反応に分ける作業を行います。
例えば上司の叱責が強く、それに上司と話すだけでも気が重い、という状況があったとします。
この場合のストレス状況は「上司から強い叱責を受けること」ストレス反応は「上司と話そうとするとそれだけで気が重い」となります。
アセスメントを行う際のポイントは以下の6点です。
①ストレス体験を題材にする
②題材を対象に、認知行動療法の基本モデルに沿った自己観察を行う。(上記のことです)
③シートに記述しそれを外在化する
④外在化された自分の体験を客観的に眺める
⑤ストレス体験における悪循環を理解する
⑥ストレス体験を理解することを通じて、自分自身を理解する。
コーピング
コーピングとは自分を取り巻くストレス状況を改善したり、ストレス状況によって生じたさまざまなストレス反応を緩和したりするために、何らかの対処を意図的にすることです。
先ほどの上司に叱責される状況で、気を紛らわせるためにお酒を飲んだり、友達に相談したり、自分の部屋でごろごろする等、そうした行動がコーピングになります。
認知行動療法には5つの基本モデルがあります。
環境、認知、気分・感情、身体反応、行動です。
この中で、コーピングの対象となるのは認知と行動のみになります。
なぜなら、上司に怒られているという環境を認知行動療法で改善することはできないし、怒られて感じる憂鬱な気持ちや、それに伴って起こる心拍数の上昇といった身体反応は自然に沸き起こるものなので、変えようがないからです。
認知行動療法を実施するにあたって、まずストレス状況を5つの基本モデルに分けて認識し、その中の認知、行動をコーピングによって変革していきます。
この、認知と行動に焦点を当てているから認知行動療法と言われます。
こうしたモデルを使って自身を観察する「自己観察」を行い、それを書き出す「外在化」することを行います。実はこれを行っただけでも気分がすっきりする、という方もいらっしゃるようです。
認知再構成法
自分をつらくさせる思考を、つらくさせないように新たな思考に置き換える方法を認知再構成法といいます。手順としましては本文を抜粋させていただきます。
①ストレスを感じる場面をきりとって、その場面における自動思考(瞬間的に頭をよぎる思考やイメージ)と、その時の気分を見定める。それぞれの自動思考の確信度と気分の強度を0~100%で評定する。
②検討の対象となる自動思考を1つ選択する(確信度が高く、ネガティブな気分と結びつきの高い自動思考を選ぶ
③手順②でえらんだ自動思考をさまざまな角度から検討する
④手順③で検討した結果を「新たな思考」としてまとめあげ、その確信度を%で評定する
⑤もとの自動思考に対する確信度、およびもとの気分の強度を再評定する。新たな気分が生じた場合はそれを同定し、その強度の評価する
問題解決法
認知再構成法が認知に焦点をあてたものである一方、行動に焦点をあてるのが問題解決法です。手順は以下のとおり
①自分が直面している問題をできるだけ具体的に表現し、それを書く。
②問題解決に向けて、自分の考えをととのえる。「どんなことを自分に行ってあげるとよいか」ということを考え、書き込む。
③問題状況が解決または改善された状況を具体的にイメージし、それを書く
④問題の解決・改善のための手段を具体的に考え出し、それをできるだけ多く書き入れる
⑤手順④で書き入れた手段それぞれについて、「その手段はどれだけ効果的か」「その手段はどれだけ実行可能か」という2つの評価基準に沿って、0~100%で評価する
⑥評価の高い手段を組み合わせて、目標を達成するための実行計画を立てる
⑦実行計画の行動実験を実施し、効果を検証する
コーピングレパートリーを可能な限り増やす
ストレスに対して意図的に何かをすることをコーピングといいます。この「意図的である」というのがポイントです。
例えば先ほどの例でいうと、上司の叱責によるストレスで知らず知らずのうちにお酒を大量摂取してしまった、というのはコーピングではありません。
一方、「今、自分には上司に叱責されたというストレス状況があってそ、それに対して自分の中に気が重くなるというストレス反応が生じている。こういうときはお酒を飲んで気晴らしをするか!」と思って、意図的にお酒を飲むことがコーピングです。
このコーピングは、幅広く、多様に使えた方がいいので、コーピングの質よりも量を重視して、たくさんのコーピングレパートリーを増やしていくのがよいです。
まとめ
ここまで読んでいただいて、認知行動療法のことが少しでもわかりましたら幸いです。
本著には、上記、認知行動療法の技法を実践するためのワークシートがついており、それをそのまま使って、認知行動療法が実践できます。
こうしたアセスメントと認知行動療法の技法を複数回行うことで、自分の中に生じる認知と行動がすこしづつ変化していきます。
今現在、特にこころの病気と診断されていない人でも、日々ストレスに感じているようなことがあったらこれを実践し、自身のセルフケアを行ってみるのはいかがでしょうか。
それでは、また。