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書評No.11 コンサルタントの対話術

顧客先との対話、問題点の洗い出し、報酬についての相談等、コンサルに限らず顧客との対話を必要とするシーンは多々あります。

私も会計士として、顧客とコミュニケーションを行い、会計上の問題点の洗い出しをする、ということは日常的に行っています。

そういった時に役立つ対話の方法について、参考になる書籍を探していたところ、本書に出会いました。

どういう本なの

コンサルタントとして15年以上に渡って独立し、年収3000万円を達成されている著者の、コンサルタントにおける実際の対話ノウハウを書きだした本になります。

実際に現場で使われているテクニックのため、非常に参考になる本になっています。

対話のための準備

本書を含め数冊の本を出している著者ですが、どの本にも共通して出てくるキーワードがあります。

それは”安心安全、ポジティブな場づくり”です。

これは簡単にいうと、発言が否定されず、各人の話を受け入れ、そこからアイディアや気づきを引き出すような場の雰囲気を作るということです。

コンサルタントとして、自身の知識やスキルアップに注力する方は多いと思います。

そうした努力ももちろん大事なのですが、作者が強調しているのは、この”安心安全、ポジティブな場づくり”をし、相手の頭の中にある”お困りごと”のトップ3を引き出し、そこに注力をすることです。

対話を成功させる仕組みづくり

作者はコンサルタントのあり方として”パートナー型”のコンサルタントを推奨しています。

これは、相手の目線にたって共に考え、現状の課題と次にフォーカスすべき点、いわゆる問題の核心をとらえ、それを整理することで問題解決を促すというスタイルです。

このスタイルを確立することが、対話術を成功させるためのカギとなります。

なお、別のスタイルとして、例えば相手に一方的に教えるスタイルもありますが、作者の実体験として、会社の社長は他人から上から目線で教わることを嫌うといっています。

そのため、相手に一方的に教えるだけだと、当座の問題が解決した時点で契約を切られるおそれがあります。

また、相手の要望を何でも聞いてしまう御用聞き型のコンサルをしてしまうと、下請け仕事のようなことをさせられ、無限に時間を取られてしまう恐れがあります。

こうした事態をさけるため、事前にやること、やらないことを明らかにしておくことが重要になります。

「事前に言えば説明、後で言えば言い訳」ということを作者は本書で繰り返し述べています。

事前の説明、準備というのが対話を成功させるために、それだけ大事だということです。

まず相手の対話を引き出すためには、誘い水となるトークが必要となります。

それは、自分の事例、知人の事例、有名人の事例、それもタイプの異なる例を3つ程紹介し、相手が自社の理念や方針といった重要なテーマを喋りやすくするためのものです。

相手の表面的なお困りごとの裏には、経営者がなぜそう考えるのか、という前提があります。

それは経営者が考える会社のあり方であったり、今後の方向性についての見通しが含まれています。

そういった問題の核とも言えるようなことを把握し、それに対して必要に応じてアドバイスを行い、クライアント自身で核心に気づいてもらうということが重要になります。

そのため、誘い水となるトークを行い、相手の自社理念や方針を最初に引き出すというのが重要な作業となってきます。

報酬についての対話

仕事をするうえで、有利な報酬設定をすることが大事なのは言うまでもありません。ここで、似たような同業他社より高い価格を提示するにはどうすればいいのか。

それは、”自分が何と比べられるかを相手任せにしないこと”です。

ここでもやはり、事前のトークが必要となってきます。

今回の場合、提供している同業他社の通常の相場を月額5万円、自身が欲しい価格を月額15万円と仮定します。

通常であれば、同業他社が5万円の相場であれば、それと比べて15万円もの報酬提示は不可能に思えます。

しかし、考え方として大事な点は、自身が他者よりも高い報酬を提示する場合、何と比べれば15万円が安く感じるのか、ということです。

人数30人規模のような会社では、いわゆるナンバー2が不在のことが多いです。社長が今後の判断をするうえで、相談でき、共に考えていくナンバー2の存在です。

通常のナンバー2であれば、月収は70万円とか場合によってはそれ以上になるかもしれません。

ここで、自身がこのナンバー2のような存在として価値を提供する存在であることを事前にアピールするのです。

具体的な細かい方法論は本書に譲りますが、月収15万円とは、新入社員の給料よりも安いです。

新入社員並みの給料で、ナンバー2と同等の価値を提供するスタンスのコンサルティングを実施する、ということです。

このことを事前に相手の頭に入れておくことで、比較対象が変わり、報酬交渉を有利に進めることができるというのが本書で紹介されている内容になります。

まとめ

実際の仕事上の対話でも、報酬についての交渉でも、事前に伝え、準備をするということが大切です。

”安心安全、ポジティブな場づくり”、比較対象をこちらで用意する。どれも先に相手に誘い水となるような質問や説明をすることで実行可能となるものです。

本書では、そうした事前準備の大切さ、さらに具体的な方法論について、ノウハウがぎっしりとつまった本です。

私も読んでいて正直「そこまで話してしまっていいの!?」と驚くぐらいにノウハウの開示がされており、大変参考になる本でした。

それでは、また

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