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個人のあなたもひとごとじゃない!電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とはなにか

制度概要

電子帳簿保存法とは、国税関係(法人税法や所得税法)の帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)で保存することを義務付ける法律です

今まで紙媒体で保存していたものを全て電子媒体にしなければならなくなり、紙の請求書もスキャンして電子保存するといったことが必要になってきます。

この制度は、会社、個人事業主、フリーランス関係なく適用されます。

副業をしている方も、事業所得として申告する場合は同様に電子保存が必要になります。

対象

電子帳簿保存法が対象とするのは、「国税関係帳簿」「国税関係書類」「電子取引」の3種類です。


なお、改正が入り「オンライン取引」の証憑類は「デジタルデータのまま」保存しておかなければならなくなります。

「オンライン取引」には、Amazonでの買い物、オンラインバンキングの振込、クラウドサービスの契約なども含まれます

これにより、事実上、全ての事業者が「オンライン取引」を行っているはずなので、企業だけでなく、個人事業主も対応する必要があります。

紙の領収書など証憑類をスキャナーで読み込んで保存する場合には、修正や削除の履歴が残るクラウドドライブでの保存・管理、または、ローカルドライブに保存する場合にはタイムスタンプの付与が必要になります。(詳細は後述します。)

電子帳簿保存法義務化に対応できなかったときのペナルティ

電子取引データについて、電子帳簿保存法の要件に従った保存がされていない場合、税法上保存義務がある帳簿書類として取り扱わないこととされています。

これは、青色申告承認の取消対象になり得る可能性があるということです。

また、電子取引データの改ざんなどにより不正があった場合、重加算税を10%加重される措置が整備されています。

さらに国税関係帳簿書類を適切に保存しなかった場合、会社法第976条の規定により100万円以下の過料が科せられます。

必用要件

下記が電帳法での保存方法になります。

電子帳簿保存(電帳法第4条1項・2項)

  • 最初からPC等で作成した帳簿や書類(決算関係書類、取引関係書類)を、一定の保存要件のもとに電子データのまま保存すること
  • 本条項は「容認規程」(=取り組みたい事業者が任意で行うもの)

スキャナ保存(電帳法第4条3項)

  • 相手先から受領した取引関係書類、もしくは自社が紙で作成・発行した取引関係書類をスキャナで電子化して、一定の保存要件のもとに保存すること
  • 本条項は「容認規程」(=取り組みたい事業者が任意で行うもの)

電子取引(電帳法(第7条)

  • 電子データで相手先へ送付または相手先から受領した取引情報を、一定の保存要件のもとに電子データのまま保存すること
  • 本条は「義務規程」(=該当する場合には、必ず要件を満たすべきもの)

また、電帳法では検索要件保存要件があります。

<検索要件>

電子保存する際には、以下3つの要件を満たした検索機能を持つ必要があります。

  • 1.取引年月日/取引金額/取引先を検索項目として検索ができる
  • 2.日付または金額の項目に関しては、範囲を指定して検索ができる
    (例:2022年1月1日~3月31日間に行われた取引を検索/取引金額が¥1,000,000~¥3,000,000の書類を検索)
  • 3.取引年月日/取引金額/取引先の2つ以上の項目を組み合わせて検索ができる
    (例:○○株式会社との取引かつ、2022年1月1日~3月1日に行われた取引を検索)

<保存要件>

保存要件には下記があります。

  1. システム概要に関する書類の備え付け
  2. データが確認できるディスプレイ・アプリの備え付け
  3. 検索機能の確保
  4. データの真実性を担保する措置

「1.システム概要に関する書類(データ作成ソフトのマニュアル等)の備え付け」と、「2.データが確認できるディスプレイ・アプリの備え付け」は、税務職員のみならずその企業自身が電子データを確認するのに欠かせませんから、当然のことです。

対応のポイントとなるのは、「3.検索機能の確保」と「4.データの真実性を担保する措置」になります。

「3.検索機能の確保」は、「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3項目で検索できる状態にしておく必要があります。

①専用ソフトで機能を備える方法

②保存するファイル名を「20220201_(株)expact_110000」のようにしてフォルダの検索機能が使えるようにしておく方法

③Excel等で索引簿を作成し、ファイルと関係づけて検索できるようにしておく方法でも可能です。

なお、売上高1,000万円以下の法人・個人事業主には、取引年月日や取引金額などで検索できる形でデータを保存することは求められていません。

「4.データの真実性を担保する措置」については、下記A~Dのいずれかを行うことが求められます。

  • A.相手先にてタイムスタンプが付与された後、電子データの授受を行う
  • B.授受後に自社でタイムスタンプの付与を行う
  • C.データの訂正削除を行った場合に、その履歴が残るシステム、または訂正削除が出来ないシステムを利用
  • D.正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理規定を備付ける

Aは取引先、Bは自社にタイムスタンプが付与できるシステム導入が必要です。

Cについても、システム導入が必要なほか、データの保存だけではなくやりとりもそのシステム内で行う必要があります。

Dについては、自社で電子データの取り扱いについての規程を、国税庁が公表しているサンプル等を活用して定めておく方法です。

なお、電子取引データの保存システムとして販売されているものの中には、データのやりとりはそのシステム外で(メール等で)行われる場合も少なくないことから、真実性の担保は4の事務処理規程で図っていることが多いようです。

小規模事業者、個人事業主の場合

電子帳簿等保存・スキャナ保存については、保存義務者の選択により紙で保存するかデータで保存するかを決められるためすぐに対応する必要はありません。

一方、電子取引データ保存は、2024年1月から義務化されるので、対応していく必要があります。書類の数が多くなく、書類を扱う担当者が決まっていて、運用方法が徹底できる場合は、以下の方法が適しているのではないでしょうか。

「3.検索機能の確保」については、電子データのファイル名に日付・取引先・金額を付与するか、日付・取引先・金額と電子データを結びつける索引簿を作成します。

「4.真実性の担保」については、新システムを導入するにはコストがかかりますので、「不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程」を整備・運用する方法が最も簡単です。

事務処理規程のひな型については、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

これを参考にしながら、自社のやり方(ファイル名の付与または索引簿の作成等)にあわせて規程を作成しておきます。

国税庁「電子帳簿保存法関係/参考資料(各種規程等のサンプル)

また、電子帳簿保存法に対応したfreeeやMoneyForwardといった会計ソフト・クラウドサービスを導入するのも一つの方法です。

銀行やクレジットカードのデータと連携しながら記帳・保存するシステムもあります。

これらのサービスを導入することにより、経理業務の効率化も実現できます。

ここまで読んでいただいて、タイムスタンプとはいったい何?どうすれば活用できるの?という疑問が浮かぶと思います。

次章で、その説明をしていこうと思います。

タイムスタンプについて

タイムスタンプとは

タイムスタンプとは電子データがスタンプの付与時点に存在していたかを証明することと、付与以降の改ざんがされていないことを証明する技術のことです。

電子データの改ざんを防ぐための要件として、電子データ書類へのタイムスタンプ付与が義務付けられています。

このタイムスタンプ付与は事業者自身で行えるものではなく、外部と連携した事前の準備が必要です。タイムスタンプに必要な環境整備と必要書類について解説します。

タイムスタンプを取得するには、まずインターネット環境が整っていることが前提です。

そしてタイムスタンプを付与する時刻認証局と契約を済ませた上で、タイムスタンプ付与ができるシステムを導入して準備完了です。

実際の取得方法としては、まず電子データで保存する書類を用意します。

スキャンやスマートフォンでの撮影を行い、この電子データをタイムスタンプシステムへアップロードをすると、認定事業者よりタイムスタンプが付与される仕組みです。

タイムスタンプの要件としては下記2つがあります

1.日本データ通信協会の認定を受けたタイムスタンプを付与すること

2.課税期間中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、一括検証が可能なこと

一括検証とは、タイムスタンプ付与後に、対象のファイルが改ざんされていないか、付与されたタイムスタンプの有効期限がきれていないかをまとめて確認することを言います。

税務調査の際に、大量のファイルのタイムスタンプ情報を一件ずつ確認していると莫大な時間を要してしまいます。


スムーズにファイルの真正性を確認するために、大量のファイルのタイムスタンプ情報を「一括で」検証できる環境を用意する必要があります。

タイムスタンプが必要となる書類

タイムスタンプが必要になる書類は、

・仕訳帳/総勘定元帳/現金出納帳などの国税関係帳簿書類

・貸借対照表/損益計算書/棚卸表などの決算関係書

・領収書/請求書/発注書などの取引関係書類が挙げられます。

タイムスタンプを付与する方法

タイムスタンプの取得には、限られたタイムスタンプ事業者との契約が必要です。またタイムスタンプの利用には費用がかかります。

タイムスタンプの業者は現状では下記5社になります。

タイムスタンプ事業者とサービス名称は以下の通りです。


「アマノセキュアジャパン株式会社/アマノタイムスタンプサービス3161」
「セイコーソリューションズ株式会社/セイコータイムスタンプサービス」
「株式会社TKC/TKCタイムスタンプ」
「三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社/MINDタイムスタンプサービス」
「株式会社サイバーリンクス/サイバーリンクス タイムスタンプサービス」

タイムスタンプ発行の手順は、以下の通りとなります。

1. タイムスタンプの対象となる書類を用意する
2. 書類のスキャンまたは撮影をおこなう
3. 画像をタイムスタンプシステムにアップロードする
4. タイムスタンプ事業者からタイムスタンプを付与される

電子帳簿保存法で「スキャナ保存」を認められている書類については、タイムスタンプの付与が必要となっています。

タイムスタンプ発行費用については、認定タイムスタンプ事業者の1つである、アマノ株式会社が発行する「アマノタイムスタンプサービス3161」を例に費用を確認してみると、次の通りとなっています。

メニュー初期導入費用月々のランニング費用
従量制・アカウント発行費用:1アカウントあたり¥6,000(税抜)・月額基本料金:¥8,000(税抜) ※基本料金には、1000スタンプ利用分を含む ・アカウント管理費用:1アカウントあたり¥500(税抜)
定額制・アカウント発行費用:1アカウントあたり¥6,000(税抜)・オープン価格 ※秒制限の設定ごとで料金が異なる (1スタンプあたり1秒・5秒・10秒・20秒・30秒)

会員登録に数千円から1万円程度の費用がかかるケースや、システムの導入に10万円から30万円程度の初期費用が発生するものもあります。

タイムスタンプの発行ごとにかかる費用は、業者によりばらつきはありますが、概ね10円程度というのが目安になります。

ただし、業者によっては、タイムスタンプ発行の上限回数に応じたコース設定を設けて、月々固定の費用でサービスの提供をしているケースもあります。

従量料金についても、費用の大小だけで判断するのはよくありません。

サービスによっては、会計ソフトとの連携ができたり、自動仕分け機能が備わっているものもあるため、そうした機能も含めてどのシステムを導入するかを考えていくのがいいでしょう。

タイムスタンプの緩和要件

タイムスタンプは一定の要件を満たしていると、付与要件が緩和されます。

画像データの修正や削除履歴が残るシステムを利用している場合は、タイムスタンプ要件を満たす必要はありません。

つまり、電子帳簿保存法に対応している経費精算システムを使用すれば、タイムスタンプは必要なくなるということです。

該当する経費精算システムとしては、

・マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)

・楽楽精算(株式会社ラクス

等があります。

また電子データの修正や削除をした場合でも、その事実と内容を確認することができるか、入力期限内に電子データを保存したことが確認できるクラウドシステムなどであれば、タイムスタンプは不要になります。

まとめ

会社、個人事業主、フリーランス、事業所得としている副業すべてが電帳法の対象となります。

電帳法では検索要件保存要件を満たす必要があります。

保存要件を満たすためには、タイムスタンプの発行が必要です。

ただし、タイムスタンプはお金がかかるため、小規模事業者や個人事業主等は、クラウドドライブでの保管をお勧めします。

また、売上1,000万円以下では検索要件を満たす必要が無くなります。

小規模事業者等はクラウドドライブに保存しておけば当面は大丈夫かと思われます。

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