会計士受験生・補修所生向け

会計士試験合格者が監査法人に就職することのメリット

会計士試験受験生の皆様、日々の勉強本当にお疲れ様です。

12月の短答式試験1回目に合格した方、惜しくも落ちてしまい短答式2回目に向けて勉強に励んでいる方、様々にいると思います。

会計士試験はとにかく勉強が大変な試験なので、「自分が合格したら、どういう所で働こうか」というところまで、頭が回せていないぐらい勉強に追われている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

会計士試験合格者の8割程は監査法人に就職すると言われています。

近頃はキャリア選択の多様性から、監査法人以外を選択する方も増えてきています。

そういった状況下の中、あえて監査法人に就職することのメリットを書き出してみました。(監査法人以外に就職する判断も素晴らしいと思います。あくまで今回は監査法人のメリットを書いているだけです。)

会計士試験合格者として働くということ

監査法人に就職する大きなメリットは、会計士資格を取得しやすいことです。

会計士試験受験者の皆様はご存じかと思いますが、会計士試験に合格しただけでは、会計士の資格がもらえるわけではありません。

資格を入手するためには、下記3つの条件をみたしている必要があります。

  • (1)公認会計士試験に合格した者(免除された者を含む)であること
  • (2)実務経験(業務補助等)の期間が2年以上ある者であること
  • (3)実務補習を修了し、内閣総理大臣の確認を受けた者であること

(金融庁「公認会計士の資格取得に関するQ&A」)より

(2)の実務経験(業務補助等)については、監査法人で監査業務に従事していれば条件を満たせます。

監査法人以外に就職しようと思っている方は、就職希望先がこの実務経験要件を満たしているかを必ず確認してください。

金融庁のHPにQ&Aとして詳細が載っています。

厄介なのが(3)実務補修の修了です。

実務補修の修了要件として、実務補修機関へ参加し授業を受け、一定数の単位を取得する必要があります。この取得ですが、補修機関のカリキュラムでは、通常3年間かかります。(期間の短縮制度あり。)

オンラインでの授業と、直接参加する授業があるのですが、直接参加の場合、授業開始が通常平日の18:00からという時間帯が多いです。

つまり、授業に参加するためには、定時退社するか、早く仕事を切り上げて補修所を受講することに関して、あらかじめ職場の了承を得る必要がでてきます。

この点、監査法人はそういった事情をよく知っているので、「補修所の講義があるので、今日は早抜けさせてもらっていいですか」とでも言えば、スムーズに了承が得られます。

しかし、監査法人以外の職場では必ずしもそうではありません。

個人的な体験談なのですが、私は公認会計士試験に合格した当初、とある会計事務所で働いていました。

補修所へ授業を受けに行くことについて、直属の上司の了承を得ていたのですが、ある日事務所の所長に呼び出され、「君は仕事を頑張っていない。何かと補修所に行くためにすぐ帰ってしまうし。」などと言われてしまいまいた。

このことが響いたのか、その期のボーナスが大幅にカットされていました。

監査法人以外の職場では、補修所への出席について、必ずしも理解がある訳では無いということをご理解ください。

必要な受験

会計士合格者は補修機関に3年間通って必要単位を取得するわけですが、その中で、全10回のテストと最後に修了考査を受けなければなりません。

このテスト・考査というのが、けして簡単ではなく、独学で勉強しようとするとかなり苦戦するでしょう。

したがって、会計士の先輩方のアドバイスを受けることが非常に効率的です。全10回のテストについて、過去の問題傾向について教えていただけるだけでも大分勉強効率が上がるので、ぜひアドバイスを受けて欲しいです。

しかし、監査法人では容易にアドバイスを受けられるものの、監査法人以外の職場に入社している場合、そもそも身近に会計士の先輩がいない、といった事態も起こりえます。

こういったアドバイスを受けられる環境という点で、監査法人が有利になります。

また、修了考査は独学では本当にしんどい試験のため、予備校に通って勉強をする必要がでてきます。こうした予備校の受講費用についても、監査法人であれば法人負担してもらえます。

また、監査法人では修了考査に向けて、通常2週間程の試験休暇をもらえるのも特徴です。

よほどの事情が無い限り試験休暇は取らせてもらえますので、そういった意味でも、監査法人は会計士資格を取りやすい環境であると言えるでしょう。

修了考査では、実務でどういった対応をするのか、監査計画はどのように組み立てていくのか、という実務的な問題も出ます。

実際に仕事で監査をしていれば簡単に分かるのですが、監査経験がないとピンとこない類の質問です。監査法人で監査業務をすると、こうした試験対策にも役立ちます。

意外と面倒な公認会計士開業登録

会計士の資格を得るためには、公認会計士の開業登録が必要になります。

この登録作業が非常に複雑で面倒です。

まず、必要書類だけでも17種類用意する必要があり、中には取得のために数ヶ月を要する書類もあるため、資格取得をスムーズに行うためには、計画的に書類の準備をしておく必要があります。

ここでも頼りになるのが会計士の諸先輩方です。

書類取得において忘れやすい手続きや、取得が大変な書類について知っているので、そうした方々からアドバイスを受けられるのは大変助かります。

また、「業務補助等の報告書」という書類を入手するために、職場に業務補助の証明書を発行してもらう必要があります。監査法人であれば、そうした業務に慣れているため、作業がスムーズです。

まとめ

以上、監査法人に勤めるメリットを、会計士資格取得の観点から見ていきましたが、いかがだったでしょうか。

監査法人は非常に離職率の高い職場です。離職率は7年以内で50%以上と言われています。

監査経験が長い程、重い責任がふりかかり、その割には給与が増えないため、待遇と責任のバランスを失い退職する人が後をたちません。

また、監査法人では基本的に退職金というものが出ないため、長く法人に勤めるモチベーションというのが沸きにくくもあります。

離職した方は、別の監査法人、一般事業会社、会計コンサル会社、会計事務所など、多種多様な職場に転職していきます。

公認会計士、というブランド価値はそれだけ高いということです。

何が言いたいかというと、監査法人は基本的に終身雇用の業界では無いし、転職するのも全然普通だ、ということです。

そのため、資格取得のために監査法人に入り、資格を取った入所4年目あたりで辞めていく人が相当程度います。

なので、最初は監査法人に資格取得目的で入所し、セカンドキャリアで本格的にキャリアを作っていく、という選択肢は全然ありだと思います。

会計士試験合格を目指している皆さんは、こういった業界事情も踏まえた上で、合格後のキャリア形成について思いをはせていただきたいと思います。

それでは、また。

-会計士受験生・補修所生向け