仕事では、ハードな局面というのは多々あり、タフであることを求められる場面も多いでしょう。しかし、皆が皆タフなわけではないし、タフでなければ生きていけないとするならば、そうでない人はどうすればいいというのでしょうか。
私自身の体験も踏まえて、タフじゃなくても生きていくことについて、今回は述べていきたいと思います。
目次
うつを経験して
私は大学時代にうつになり登校できない状態になったことがあります。
スクールカウンセラーの下で治療を行い、徐々に復学をしていきました。
幸いにも公認会計士の資格を取り、大手監査法人に就職も決まり、「これでもう大丈夫だ、うつの時のハンディを乗り越えられる」と思っておりました。
しかし、その監査法人でもうつになり、あえなく退職することになりました。
その時はひたすら内向的になり、何日も外に出ず、黙々と読書をしておりました。
今度はメンタルクリニックに通い回復の兆しが見え、私は中堅監査法人に転職することに決まりました。
最初の数年はよかったのですが、とある事態に巻き込まれ、3度目のうつが発症することとなりました。
何があったかというと、過重労働というのもあったのですが、それ以上に上司から騙されたことによる精神的なショックが大きかったです。
具体的な話はここでは割愛しますが、とにかく上司から騙され厄介なクライアントを押し付けられ、別の上司からダメ押しのようにこれまた厄介なクライアントの主査をすることになり、私は完全に手が回らなくなりました。
そのことをずっと引きずり仕事をし続け、私は日々のストレスを蓄積させていき、ついにはうつが再発しました。
再びうつが発症した時のことは今でも鮮明に思い出せます。
現場往査の日、クライアントの最寄り駅で降り立った時、ふいに強いめまいと動悸、息切れが私を襲い、職場への足が向かなくなりました。
「訳があって遅刻する。」と現場スタッフに伝えたものの、一向に足が職場に進まず、その日から私は仕事をすることができなくなりました。
当時は何も手につかず、一日中横になりながら、ぼうっとパソコンでネットサーフィンをするだけの毎日が続きました。いきつけのクリニックにも行っていたのですが、半年経っても回復の兆しはあらわれませんでした。
一日中、うつを何度も発症した自分を責め続け、「自分は社会不適合者だ」と思い続けていました。
事態が好転したのは、会社の産業医から勧められたメンタルクリニックを受診したことでした。そこのお医者様は私の話に熱心に耳を傾けてくださり、処方薬も大幅に変わり、結果として私の状態は段々と良くなっていきました。
「今はとにかく休むことが一番あなたのするべきことです。」と言われ、私はとにかく休みました。休んで休んで、少し体調が回復してきたら、今度は図書館に毎朝通うことを習慣にするよう提案されました。
これは、朝の習慣づけを行うことで一日のリズムを取り戻し、自身の体調回復に役立てるという方法です。
うつを患うと自律神経がやられるため、夜に眠れなくなり、一日中緊張しっぱなしのような、非常につらい状態になります。
薬を使ってもよいので、とにかく眠り、朝に図書館に行って読書なり勉強をする。そうして体に規則正しい習慣づけを再度覚えさせていくというトレーニングです。
それを繰り返しながら半年程たち、私はようやく職場復帰できるまでに回復し、今にいたります。
うつから学んだこと
うつから学んだ最大のことは、自分は決して強い人間ではないし、タフであることもできないということです。
まず何度もうつを再発しているし、それによってストレス耐性も下がっております。長時間の集中というのも、実はうつ病中には難しいものでして、これはあるていど症状が回復してから徐々に取り戻していきました。
こんな状態なので、よくSNSやテレビで紹介されているような、いわゆる超人的な働き方は自分にはできないとスッパリあきらめました。
そのうえで、上手く社会と折り合いをつけて生きていく方法を考えることにしました。
まず意識的に変えたこととして、”自分の休息の時間をとにかく取る”ということでした。
監査の現場では繁忙期にかなり忙しくなり、深夜残業や休日出勤といったことがよく起こります。
そんな中でも、できるだけ早めに帰る、飲みの誘いを断る、夕食は先にすませてしまう、家に帰ってから寝るまでの時間をできるだけ短くする、といった工夫をして、できるだけ休息に使える時間を増やしていきました。
うつの再発前は、早朝に勉強、家に帰ってきてから勉強、休日も自己研鑽をしていました。
しかし、自分の休息のための時間を取らないと、すぐにメンタルがやられてしまいます。
恐らく一般の皆様も、私程ではないかもしれませんが、休む時間を意識的に取らないと、遅かれ早かれ体調を崩していってしまうと思われます。
例えば、同僚や先輩との飲み、SNSの閲覧、資格の勉強etc...等、色々とプライベートで忙しいこともあるかとは存じます。しかし、とにかく休む時間は必ず一定量確保してください。
それすらできないくらい忙しい会社はブラックなので、転職を考慮してください。何より自分の身を守るためです。
ショートスリーパーという罠
ショートスリーパーといった人たちを耳にしますが、あれは完全に生まれ持った体質に依存しています。その体質ではない人がショートスリーパーのマネをすると、心身を壊します。
ショートスリーパーの原理につきまして簡単に説明します。
人は長時間活動を続けていると、脳波に乱れが生じ、集中力の低下、感情の制御力の低下、自律神経の乱れ等、様々な悪影響がでます。
この脳波の乱れは一定時間、睡眠を取ることで改善できるのですが、大抵の人は7時間程の睡眠でようやく脳波の乱れが改善されます。
しかし、極まれに、脳波が3時間程の睡眠で改善する人がいます。これがショートスリーパーの人たちです。
この”脳波の乱れを改善する”ための時間というのが完全に体質依存なので、努力や工夫でショートスリーパーになることはできないということです。ちなみに、脳波の回復までに平均より長い時間の睡眠が必要なロングスリーパーの方もいらっしゃいます。
とにかく自分をリラックスさせて休んでください。休まないと確実に心身は病んでいきます。もし不眠が続くようでしたら、それは危険信号なので、急いで精神科やメンタルクリニックを受診してください。
とにかくストレス源から離れる
職場に嫌な同僚や先輩、上司がいてイライラする。テレビやSNSでキラキラ輝いている人をみて、自分は何でそうではないのかと落ち込む。
こういったことは皆様、度々あるのではないでしょうか。
私はうつが再発してから、テレビのバラエティー番組が見れなくなりました。やたらとうるさいし、演出はギラギラしているし、とにかく見ていてつらいのです。
SNSに関しても、Twitterでは毎日誰かが書いた仕事の愚痴や、他人を見下すような言動を見ることになるので、これもできなくなりました。
そこで私は、テレビやSNSを徹底的に避けるようにしました。
今でこそ、Twitterで発信こそしていますが、他の方のツイートは見ないですし、TLも基本見ません。テレビは未だにみていません。
こうしましたが、特に支障はありませんでした。たまに周りの話題についていけないこともありましたが、あくまで”たまに”です。そこまで困りません。
また、嫌な同僚や先輩、上司は意識的に避けるようにしました。チームが同じになったとしても、意識的に避けたり、アサイン担当の上司に相談し、別のチームにアサインしてもらう、ということもしました。
以前の私であれば「社会人なんだから、多少嫌になっても我慢しなければならない。」と思い、無理して関わってきましたが、今は自分の身を守ることが最優先なので、とにかく避ける、という行動をとっています。
また、疲れてイライラしているな、と感じたら、休日に特に何もせずとにかく眠るようにしました。
疲労を抑えながら勉強をしても効率がわるいですし、そうしたことは自分の大きなストレス源になっていたからです。
理想をいえば、仕事は遅くまでバリバリこなし、空いた時間で自己研鑽、ブログも毎日書き、休日も勉強する、というようなタフな人間を目指したいところですが、そんなことは自分にはできない、と割り切り、休む時は休むようにしています。
セーフティネットを活用する
日本には、精神の病気で働けなくなった場合に、様々な制度が助けてくれます。ざっと書きますと、
・障害者手帳交付による住民税の交付。一部交通機関の費用無料
・傷病手当金の支給
・自立支援医療(精神通院医療)による医療費負担額の減少
・会社を辞めた時は失業手当
・生活保護
といったものが挙げられます。私はこの中で、障害者手帳の活用、傷病手当金の受給、自立支援医療による医療費減額を受けました。
精神が辛いときにお金のことについて心配するのは大変負担になります。
なので、こういった制度に助けていただき、回復のみに集中できたことも、症状が改善にむかった理由の1つといえるでしょう。
仮に私と同じように働けなくなってしまった方の中で、こういった制度を受けることに抵抗がある人もいるかもしれません。
しかし、困ったときに助けを求めるということは必要なことです。
重いうつになってしまうと、自分一人でなんとかするのは困難です。
こうした社会の支援制度やお医者様、身近な家族といった存在を頼るべきです。
うつを患うのは真面目な人が多いですから、「誰かに面倒をかけたくない」と思われるかもしれません。
しかし、自分を助けるためにも、誰かに助けを求めるべきだし、一人で頑張りすぎた結果、自殺といった行為にまで及んでしまうと、周囲の人間を悲しませるだけです。
ここは誰かに助けを求めるべき状況なんだ、という認識が大事です。
まとめ
いかがだったでしょうか。とにかく休む時は休むというのを徹底するようにしましょう、ストレス源から離れましょう、周りを頼りましょうという話でした。
私は現在、うつ改善のための投薬治療を続けている最中ですし、まだまだ完全回復とはいえません。しかし、そんな状態でもなんとか生きていけています。
休日や早朝に勉強することも再開しましたが、前と違い、疲れを感じたら素直に勉強を止めてその時間を睡眠にあてるようにしています。
テレビは見ないし、SNSも最低限しかやりません。
仕事が過重で辛いときは、素直に上司に相談しています。
こうした自分を守る小さな行動の積み重ねをコツコツと続けていくことで、うつの再発リスクを抑えています。
タフではない自分が生きていく方法をまだまだ模索している最中ではありますが、以上が私の今の”生き方”です。
同じように精神を病んでしまった人の、少しでも参考になれましたら幸いです。
それでは、また。